研究課題/領域番号 |
19K00377
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研究機関 | 宮崎公立大学 |
研究代表者 |
田宮 昌子 宮崎公立大学, 人文学部, 教授 (70316199)
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研究分担者 |
矢羽野 隆男 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (80248046)
谷口 洋 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40278437)
矢田 尚子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10451494)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 楚辞 / 屈原 / 国際漢学 / 日本漢学 / 浅見絅斎 / 西村天囚 |
研究実績の概要 |
プロジェクト二年目に当たる令和二年度はコロナ禍により当初計画とは大きく異なる展開となった。主要な活動予定であった国際シンポジウムは最終的に翌三年に延期し、研究合宿や例会もオンライン形式に変更せざるを得なかった。関連学会の中止や勤務校でのリモート授業対応による負荷増加など、計画段階とは大きく異なった研究環境の中で、二年目の成果は計画とは大きく異なる不本意なものとなった。本プロジェクトは浅見絅斎『楚辞師説』(田宮・矢羽野)と西村天囚『屈原賦説』(谷口・矢田)の2課題から構成されているため、具体的には課題ごとに述べる。 『楚辞師説』班は、プロジェクト初年度に行った基礎作業に基づいて、田宮が矢羽野の助言も受けつつ研究を進め、「浅見絅斎講『楚辭師説』研究序説―埼門派の学と思想―」として発表した。本稿は絅斎の学と思想の淵源である師・山崎闇斎とその学統である埼門派の学と思想について、形成と発展の経緯、およびその特徴を『師説』理解の鍵になると思われる「忠」を中心に考察したものである。矢羽野はテキスト研究に取り組み、『師説』の流布本である『先哲遺著 漢籍国字解全書』(早稲田大学出版部、明治44年)と小浜市立図書館酒井文庫所蔵写本との校合を進めた。年度末の例会でその途中経過を報告すると共に、絅斎の屈原理解で重要と考えられる君臣関係、その把握につながる絅斎の『大学』「格物」観について発表を行った。 『屈原賦説』班では、谷口が天囚の個人史と同時期の学術史との双方から『賦説』の位置づけを探ることを企図しているが、以下に述べる状況から令和二年度は研究遂行は困難であった。矢田は初年度から『賦説』の訳注作業に着手しており、『賦説』の精読を通して天囚の楚辞研究を明治大正期における漢学から支那学への流れの中に位置づけることを目指しており、二年目も地道にこれを進めたが、同様に予定は大幅に遅れざるを得なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度の研究計画の遅延は全くのところ新型コロナ感染拡大によって引き起こされたものである。令和2年度は感染拡大が波状的に繰り返され、年度を通して国境を超える往来はほぼ凍結され、県境をまたぐ往来も学術目的のものは殆ど不可能となり、生活圏においても多くの制約があった。 このため、まず本プロジェクト最大の目玉である国際シンポジウムの開催は不可能となり、やむなく令和3年度に延期を決定した。シンポジウムの事前準備の場であった夏期合宿、および年間の研究成果を報告・発表する場であった春期例会も共にオンライン形式に変更せざるを得なかった。 メンバーそれぞれの研究遂行もコロナ禍によって生じた想定外の困難によって凍結や大幅遅延の状況に陥った。これはこの間、多くの大学教員が直面した事態であると思われるが、或いは勤務校の役職者としてコロナ禍対応に忙殺され、或いは勤務校への移動が困難となり研究室や図書館の蔵書にアクセス出来ない状況が長期間続き、或いはリモート授業のための講習や教材作成、リモート教育を補強するための個人指導などに多くの時間と精力を取られるなど、計画段階では想定できなかった事態に、研究の遂行は凍結状態に陥ったり、凍結とまでは行かずとも断続的で遅々たるものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は当初の予定通り国際屈原学会に参加し、研究成果を国際発信する。これが本年度の最大の活動となる。このための準備として、前期はメンバー各自が研究を進め、9月上旬に夏期例会を開催し、発表構想をプレ発表し、相互に意見交換を行う。その後、後期開学までに中国語原稿の準備を進め、国際学会への発表申請を行う。その際、当初の予定通り本プロジェクトとしての分科会開催を正式に打診する(学会には先行して意向を伝えてある)。10月上旬に秋期例会を開催し、国際学会での発表内容について夏期例会で確認した問題点や課題などを中心に勉強会を行うと共に国際学会での分科会開催に伴う打合せを行う。11月には国際屈原学会(於湖北省宜昌)にて「国際漢学における日本楚辞学」分科会を開催して、それぞれの研究発表を行う。 本プロジェクトにとって最大の課題はコロナ禍の展開が見通せないことである。感染状況によっては、中国での国際学会はリモート参加となる可能性もある。令和2年度から3年度に延期した日本での国際会議の開催時期も目下未定である。コロナ禍の進展を注視していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述したように、コロナ禍によって、予定していた国際シンポジウム開催を延期せざるを得なかったこと、夏期合宿および春期例会も共にオンライン形式に変更せざるを得なかったこと、更にコロナ禍による研究の遅延により(具体的状況は上述)図書の購入や謝金の支出も予定を下回ったことによる。 令和2年度からの繰越金は令和3年度に延期した国際シンポジウム開催費用に充て、令和3年度分担金は当初の計画通り主に国際学会の参加費用に充てる。
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