研究課題
基盤研究(C)
中国の口語自由詩「新詩」は20世紀初頭の思想解放運動の中で誕生した。本研究は主として1920年代から40年代の中国に生きる詩人の複雑な感覚や情緒を表現した作品に注目し、それらに見える個人と共同体の葛藤、審美意識と倫理感覚について考察を行った。これによって、新詩は西洋のモダニズム詩や詩学の啓発を受けて、中国語や中国文学を相対化する機会を得たこと、さらに伝統的中国古典の再読が詩的言語の発見と創造を促し、新詩の公共性を探求する手がかりを提供したことを明らかにした。
中国現代文学 特に現代詩
中国古典詩が「漢詩」として広く一般に認知され、一定量の紹介や研究の蓄積があるのとは対照的に、20世紀中国新詩の翻訳や紹介はごく少数で、一般にはほとんど知られていない。本研究は、新詩が新しい抒情のスタイルを持つだけではなく、審美意識や倫理的思考に作用する批評性と公共性を備えることを明らかにした点に学術的意義がある。また、本研究の成果である雑誌や図書の刊行によって、20世紀中国社会に生きた人々の思考や感情について、詩のことばを通して理解する機会を一般の読者に提供したことに社会的意義がある。