研究課題/領域番号 |
19K00383
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研究機関 | 九州共立大学 |
研究代表者 |
黄 冬柏 九州共立大学, 経済学部, 教授 (70315026)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 西廂記 / 元雑劇 / 明刊本 / 容與堂 / 李卓吾 / 書誌学 / 徳山毛利家 / 宮内庁書陵部 |
研究実績の概要 |
本年度は、宮内庁書陵部所蔵の『李卓吾先生批評北西廂記』について、以下の調査研究を行った。 宮内庁書陵部に所蔵されている明・の万暦38年(1610)に虎林容與堂より刊行された『李卓吾先生批評北西廂記』は、現存する李卓吾批評本の中で最も古くて影響も大きい刊本であるが、未だにその特徴や伝来及び受容の実態が解明されていない。2020年2月上旬に宮内庁書陵部にてその原本を実見し、本文・評語及び挿絵などを確認しながら、他の李卓吾批評本との比較考察を通して、該刊本の特徴を明らかにした。また、この刊本の旧蔵である徳山毛利家についても調査し、近世日本における中国古典の受容という視点から、当時の伝来の経路や方法及び受容の実態を探ってみた。 以上の調査研究の成果として、「宮内庁所蔵の『李卓吾先生批評北西廂記』について」と題して、2020年度九州中国学会にて研究発表を行う。また、「日本宮内庁蔵『西廂記』孤本考」というタイトルで第四届世界漢学論壇にて論文をまとめて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は日本国内にて実見調査と資料収集が「研究計画」の通りに順調に進んでいたが、新型コロナウイルスの感染拡大による渡航禁止のため、中国国内への調査研究は予定通りに実施することができなかった。また、同じく新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年度九州中国学会(鹿児島大学にて)と第四届世界漢学論壇(ドイツにて)は延期となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は天理大学図書館所蔵の三槐堂刊『李卓吾先生批評西廂記』について調査研究を行う。 天理大学図書館所蔵の三槐堂刊『李卓吾先生批評西廂記』は、管見の及ぶ限りにおいて、まだ詳細な考証が実施されていない。本研究はこの刊本を精査分析した上で、神田喜一郎の蔵本『北西廂記』(『中国戯曲善本三種』所収、思文閣、1982年)及び中国国家図書館所蔵の同系統の諸本と比較検討して、個々の特徴を明らかにする。また、旧蔵者である千葉鉱蔵・塩谷温についても、その関連文献を精査することで、当時の漢籍入手の経緯とその受容の実態を辿っていく。併せてこの両刊本は塩谷温の訳本『西廂記』(東京:昌平公司、1947年初版)及び『歌訳西廂記』(天理:養徳社、1958年)に与えた影響についても具体的に究明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、研究計画において中国への調査研究を行う予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大による渡航禁止のため、実施することができなかった。 次年度は研究計画に沿って研究調査を遂行すると同時に、本年度に実施できなかった中国への調査研究を追加して行う。
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