研究課題/領域番号 |
19K00387
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
末松 美知子 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (90216276)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | シェイクスピア上演 / デジタルアーカイブ / アジア / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
本研究は先行研究で構築済みのウェブ・アーカイブA|S|I|A(Asian Shakespeare Intercultural Archive)に新たな「マルチメディア・エディション」を追加し、上演映像、写真、テキスト、注釈、作品解説や論文、上演データ等を有機的に関連付けながら上演を理解する「マルチメディア」な上演研究・教育の可能性を追究するものである。シンガポール、韓国、イギリス、アメリカの研究者達との共同プロジェクトとして進めるもので、プロジェクトチームで決定した方針に基づき作業を進めている。 「マルチメディア・エディション」のコンテンツは各上演作品の全編映像(英語、日本語、中国語、韓国語の字幕付き)、作品の解説、演技様式や文化的背景等に関する詳細な注釈、テーマの観点から書かれた論文、作品に関する基本情報データで、作品はA|S|I|Aに収蔵されている62作品と新たな追加作品の中から30程度を選定した。エディションは次の4つのテーマの作品群で構成する:①アジアにおけるシェイクスピア上演と霊的世界 ②アジアおけるシェイクスピア上演とジェンダー ③アジアおけるシェイクスピア上演と子供・若者たち ④アジアおけるシェイクスピア上演と身体性 コロナ禍においてオンライン教育の必要性が高まったことから、本プロジェクトへの期待も大きくなっている。オンライン授業におけるウェブ・アーカイブA|S|I|Aの利用は世界各国の教育機関で増加しているが、中でも2020年秋よりバーミンガム大学シェイクスピア 研究所(シンガポール国立大学と協力)におけるA|S|I|Aを核に据えたオンラインコース「Shakespeare in Asia」が開始され、コース担当者が本プロジェクトのエディターとして参加することで、授業のフィードバックをエディションの作成に生かすことが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
毎月プロジェクトチームの各国研究者とオンラインリーダーミーティングを行い、具体的な作業進捗状況や新たな方針を定期的に確認・検討しながら作業を進めることができた。リーダーを中心にエディションの4つのテーマごとの注釈(作品の解説、演技様式や文化的背景等に関する詳細な注釈)作成作業が進行中である。各担当者が注釈を作成した後、複数のメンバーによる編集会議を行い、詳細な確認作業を行っている。また、「マルチメディア・エディション」パイロット版として①アジアにおけるシェイクスピア上演と霊的世界のテーマ作品である『能オセロー』(劇団ク・ナウカ)の注釈、序論、参考文献一覧などを整備し出版社との交渉の準備を進めたほか、インターフェイス案の検討も開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きプロジェクトチームの各国研究者との定期的なオンラインミーティングを継続しながら、「マルチメディア・エディション」のコンテンツの作成と編集作業を進める。また、エディションのパイロット版を出版社に提示し、オンライン出版の形態等について具体的な検討に入る。 2021年7月にオンラインで開催される国際シェイクスピア学会において、「Circulating Shakespeare Performances within the Digital Realm」というテーマでパネルセッションを行い、A|S|I|A「マルチメディア・エディション」の成果報告も含めた発表を行う予定である。世界の研究者たちと意見交換を行い、「マルチメディア・エディション」の編集方針やコンテンツの見直し作業に反映させていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
世界的なコロナ感染状況の拡大により、発表を予定していた国際学会(ソウル)がオンラインとなったほか、例年実施している英国での上演状況調査が渡航禁止となったため実施できなかったことにより、海外出張旅費の支出が大幅に減少したため。 引き続き海外出張が困難なことが予想されるため、2021年度は、関連するデジタルヒューマニティーズ関係の文献や映像資料などの購入のほか、マルチメディアエディションの注釈データの翻訳費用に充てる予定である。
|