研究課題/領域番号 |
19K00389
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
井川 ちとせ 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (20401672)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 英文学 / 受容論 |
研究実績の概要 |
本研究は、英文学研究において過去約90年間にわたり提示されてきた作品の受容をめぐる諸理論を、批判的に再検討し、ある特定の歴史的・文化的文脈において文学テクストが意味を成すとはいかなる現象であるかを多角的に問うものである。 2021年度は、イギリスやアメリカで、1990年代以降、社会現象として広く認知されている読書会に焦点を絞り、研究代表者が2014年より継続的に参与観察と情報収集をおこなっているグループの事例研究を「読書会の効用、あるいは本のいろいろな使いみちーイングランド中部Tグループの事例(1)ー」(『言語文化』第57巻)にまとめた。本拙論ではいまだ多くはない先行研究を概観したうえで、「文学」とは何か、何が読むに値する「文学」かという、定義と価値の序列をめぐる研究者の暗黙知による一定の合意と一般読者の認識との齟齬に注意を向け、本文(テクスト)だけでなく読書会向けの巻末付録(パラテスクト)を含む総体としての本が、読み手にどのように働きかけるか、そして読み手が本をどのように使うかを記述することを試みた。 また、英国の出版文化において、一般読者とテクストとが複数の行為体によっていかに媒介されているかを明らかにするため、一般読者向けの紙媒体の季刊誌二誌、インターネット上の一般読者によるレビュー、書店や版元、作家が主催するウェブサイトにおける主催者と読者および読者同士の交流などの分析をおこなった。この分析は、本研究の最終年度まで継続的におこなうものであるが、新型コロナウィルスの感染拡大により対面での開催の休止を余儀なくされた読書会のなかには、ウェブ会議システムZoomを利用し始めたグループも多かったため、渡航は叶わずともゲストとして参与観察する機会も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地調査への協力依頼を検討している方々と電子メールやウェブ会議システムでの交流をおこなったり、資料の提供を受けたりしているものの、新型コロナウィルスの感染拡大により、参与観察やフォーカス・グループ調査などをおこなうための具体的な準備を進めることは叶わなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染拡大により、英国での現地調査の目処が立たないため、2014年より継続的に参与観察と情報収集を続けている読書会や一般読者や書店主に関するデータの分析を進める。物語理論を援用しつつ、フィクションに描かれた世界とフィクションの外側の世界との類似を前提とするような読み手の姿勢(ミメーシス的読み)について考察し、「読書会の効用、あるいは本のいろいろな使いみちーイングランド中部Tグループの事例(2)ー」にまとめて『言語文化』(第58巻)に投稿する予定である。新型コロナウィルスの感染拡大はすでに、読書の環境や、読者同士の関わり方、出版社や主流メディアの読者へのアプローチ方法の変容をもたらしているため、その変容についても観察を続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査の実施が叶わず、また参加を予定していた国際学会が開催を見合わせるなどして、旅費を支出しなかったため。新型コロナウイルス感染拡大が収束するまでは、渡航計画を延期せざるを得ないため、 次年度使用額については、2021年度助成金と合わせて主に資料収集に支出する予定である。
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