本研究は、18世紀イギリスの印刷文化興隆の時期の文学と記録をもとに、書き手と読み手、書くことへの執着に注目した。特定の個人の記録の詳細な分析による研究であるので個別性をもつ一方で、印刷物だけでなくその周辺の多様な資料を利用して、物語を構成すること、共有を欲すること、記録維持を図ることの意味を探究するという広く一般性をもつ問題を課題とした。その個別性と一般性が本研究の学術的意義であると考える。そこから、現代の私たちの世界の価値観を理解するための一つの視点を得ることができ、過去の記録や文学の分析から出発して、印刷文化が苦戦する今日の社会に対するメッセージを発信する創造性を得ることになると考えた。
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