研究課題/領域番号 |
19K00394
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
関 良子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (10570624)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 芸術と社会 / アーツ・アンド・クラフツ運動 / William Morris / Edward Burne-Jones / Walter Crane / 唯美主義 |
研究実績の概要 |
研究初年度である本年度は、当初の計画どおりに、本研究の中核となる人物であるウィリアム・モリス、エドワード・バーン=ジョーンズ、ウォルター・クレインの伝記や自伝、基本文献を通読・再読し、彼らの芸術思想と政治思想、社会活動について整理した。ただ、研究に一番時間を割ける8・9月、2・3月にそれぞれ、イギリスの劇団の高知への招聘事業という別のプロジェクトの代表者として多くの時間が取られたことと、体調不良および新型コロナウイルス感染拡大の影響ゆえに国内調査出張が実現しなかったことのために、ウォルター・クレインの基本調査については未完了に終わってしまった。 本年度の研究成果としては、5月に開かれた第91回日本英文学会全国大会のシンポジウムでの研究発表「詩人モリスの作詩法―Love Is Enoughを題材に」がある。本発表では、劇詩Love Is Enough (1872) を題材にWilliam Morrisの作詩法の特徴を示し、彼の詩においては聴覚的効果と同時に視覚的効果が重要であると主張した。そして、その視覚的効果へのこだわりが、詩作と工芸を同時に行っていたというモリスの創作過程に由来している点を明らかにした。また、身分の異なる登場人物による幾重もの枠構造で成立しているという、この劇詩の構成の中に、社会主義運動へとつながるモリスの政治性を見て取れることを示唆した。本発表の内容を英語論文で公開すべく、現在、執筆に取り掛かっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果の一部を初年度に学会発表にて公開できた点では、一定の成果を上げることができた。しかし、研究に一番時間を割ける長期休暇期間(8・9月、2・3月)に、あまり本研究に専念することができなかったため、初年度に行う予定だった基礎調査を終えられなかったという点で、研究にやや遅れが生じている。 8・9月は、イギリスのシェイクスピア劇団の高知への招聘事業という別プロジェクトの代表者として多くの時間が取られてしまった。2・3月は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で国内調査出張が実現しなかったこと、また妊娠に伴う自身の体調不良ゆえに、十分な基礎調査を行なえなかったことにより、研究に遅れが生じた。基礎調査に関しては、できるだけ早急に作業を済ませ、研究2年次以降に備えたい。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本年度に終える予定であった基礎調査については、できるだけ早急に作業を済ませたいと考えている。それ以外にも、新型コロナウィルスの世界的感染に終息の見通しが立たないために、どれくらいの海外調査がいつ可能になるか目途が立たないこと、来年度より出産・育児に伴って研究を一時的に中断することにより、多少の研究計画の変更をせざるを得ないのではないかと思っている。具体的にどのように研究計画を変更することで研究成果を上げることができるかについては、来年度の研究中断期間中に具体的方策を考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
春季長期休暇(2・3月)に国内調査出張を計画していたが、自身の体調不良および新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて中止した。そのこともあって、本年度予算より、約4万円の未使用金額が生じた。この予算に関しては、産休・育休に伴う研究中断ののち再開後、改めて国内調査出張の計画を立てて執行したい。
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