研究課題/領域番号 |
19K00396
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
喜納 育江 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (20284945)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / 境域文化 / トランスナショナル / 不寛容 |
研究実績の概要 |
本年度もCOVID-19の変異株による海外渡航制限のため、アメリカの研究者や作家とはZoomによる面談を行い、アメリカにおける「不寛容」の動向に関わる情報の収集を行った。昨年度に引き続き、アメリカ社会における「不寛容」の増長にパンデミックによる環境変化がどのように関わっているかについて注目したところ、パンデミックが、既存の人種問題を悪化させているのと同時に、他者とのフィジカルディスタンスと身体的接触の欠落が、他者への想像力の欠如、そして「不寛容」へと連続していくのではないかという理解につながった。また有色人種に対する「不寛容」が顕著なアメリカ南部については、日本アメリカ文学会のシンポジア「アメリカ南部文学の現状と展望--FaulknerからNew Southern Studiesへ」で黒人作家のGayl Jonesについて「Gayl JonesのMosquitoに見る「境域」としてのLatinx Southの形成」と題して研究発表する機会があり、従来は地理的に米墨国境地域がメインとなる「境域文化」という概念が、人種構成の変容などによって南部地域にも拡大しつつある点について考察した。Jonesは、奇しくも今年度は20年ぶりに新著となる小説 Palmares を出版したが、奴隷制度を逃れた黒人がブラジルに築いたコミュニティが主題となっており、人種に対する「不寛容」がアメリカ国外ではどのような状況にあったのかという対比の中で、アメリカの「不寛容」の由来を改めて考える必要があることに気づいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も変異株による新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからず、海外渡航が厳しく制限されたため、海外での資料情報収集を実施することができなかった。ただ、現代アメリカ文学の代表的な小説家や研究者とはオンラインでインタビューをする機会を2ヶ月に1度定期的に設けてもらい、聞き取りで情報を収集するように努めた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染による海外渡航制限により、米国での資料収集等の調査が遂行できなかったため、研究の進行に遅延が生じている。感染症が終息したらすぐに調査を再開する。それと同時に、ここ数年で知り得た作家や詩人の作品になるべく精通することによって、研究課題の問題意識をさらに時勢に合った内容にしていく。これらの成果は研究論文にすることによって、国内外の関連学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症による渡航制限のため、海外旅費が執行できずに大幅な計画変更があったため。今年度に行う計画だった海外調査を来年度に行うことで執行する予定である。
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