本研究では、国家の理念である「多様性(diversity)」や、20世紀後期のポストモダンの思想を機に重要視されるようになった「混淆性(hybridity)」といった文化的・社会的価値観に今日どのような事態が生じているかについて、「境域」の文学の言説や文化表象の分析を通して究明することを目的とした。特にカリフォルニアを中心に、アメリカ合衆国の中でも人種や文化の多様性と混淆性に富む地域で、今日のアメリカの政治的状況の中で勢いを増す「不寛容(intolerance)」の言説に、他者への想像力がどのように対峙しているかを考察し、21世紀にアメリカの文学や文化が直面している課題の展望を試みた。
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