研究課題/領域番号 |
19K00402
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
波戸岡 景太 明治大学, 理工学部, 専任教授 (90459991)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 対話 / ナレーション / ソラスタルジア / インターテクスチュアリティ |
研究実績の概要 |
当該年度では、Glenn A. Albrechtの著したEarth Emotions: New Words for a New Worldの内容を精査し、solastalgiaなる概念の、ドキュメンタリー映画に対する応用可能性を検証した。同時に、研究対象となるドキュメンタリー作品のアーカイブ化・選定も進め、環境ドキュメンタリーの体系化をはかった。 具体的な作品分析としては、1930年代のドキュメンタリー作品The Riverから2000年代のAn Inconvenient Truthまでのnarrationに注目した研究をすすめ、視聴者との「対話」を成立させる型の検証を行った。ことに、仏ドキュメンタリー作品La Marche de l'empereurのアメリカ公開版におけるnarrationについての分析では、先行研究をふまえつつ、アメリカ的「話者」が作品そのものを上書きしてしまうことに見られる作品の非ドキュメンタリー化についても詳細な分析を行った。 また、実在したHugh Glassの伝説をめぐる複数のフィクション映画にみられる環境意識を、National Geographicによる環境ドキュメンタリー作品Before the Floodと重ね合わせて検証した。このとき、これら複数作品の単純な比較検証ではなく、それぞれの作品制作にかかわったスタッフ・俳優・撮影対象たちの証言をオーバラップさせ、それらを重層的に検証することにより、環境をめぐる表象文化におけるintertextualityの重要性を前景化することに成功した。 当該年度における研究成果のための準備としては、海外の学術雑誌、および共著への投稿論文執筆を行った。上記の作品分析を論文化するにあたっては、冒頭に記したGlenn A. Albrechtの議論を発展的に応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
入手困難と思われた映像資料も入手でき、分析が進んだため。また、Glenn A. Albrechtの研究書も予定通り刊行され、その全体像の読解も問題なく行えている。一方、当初の予定にあった国内外での調査のいくつかは、年末からの世界情勢の変化もあり、最終的に断念せざるを得なかったが、諸外国の研究者とのインターネットを介した意見交換を質量ともに向上させることで、期待どおりの研究成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
感染症の世界的流行のため、当初の計画にあった海外でのフィールドワークは、当面のあいだ実施できなくなった。対応策としては、インターネットの活用による海外研究者との連携をよりいっそう密にし、最新情報の獲得につとめる。また、フィールドワークのための予算を、データベースの拡充、および国際的な研究成果発信のための予算に組み直すことで、研究費のより効果的な活用をめざしたい。
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