本研究では、第一波フェミニズムの終焉以降から現代までの時代に、ポストサフレジズム(イギリス男女同権参政権獲得以降)という名を与え、一連の継続する時代として捉える。モダニズム、冷戦、新自由主義を包括的に理解することによって、イギリス女性文学のとくに社会主義運動の成功と失敗を系譜的に、また、グローバルな現象として考察するため、英米日に読者をもつモダニズム期の代表的知識人作家V・ウルフ作品とその読者コミュニティ取りあげる。これによって本課題が目指すのはモダニズム以降の英文学における連帯と分断の言説構造の解明である。
本課題は元来、3年間計画であったが、新型コロナウィルスの拡大および代表者自身の病気治療のため、1年延長し、本年が研究最終年度になる。最終年度の本年においては、第一次大戦の従軍経験者として知られるVera Brittainと英国の現代劇作家Lucy Kirkwoodの作品をともにポストフェミニズムの文脈から論じてをそれぞれ書籍に寄稿した。また前者の研究は修正のうえ、博士論文の一部として提出し、2023年3月にお茶の水女子大学より学位授与された。また、Kirkwoodの作品がリプロダクションをめぐる問題であったことから、研究テーマが発展し、日本のリプロダクションを題材にした『彼女たちの断片』を執筆した石原燃さんの講演会の開催が実現した。本課題は、現代と20世紀前半との関係を時間および空間横断的に考察することから始めたものであったが、時間および空間だけでなく分野横断的に英文学・モダニズム・フェミニズムを研究するという新しいテーマを発見することができた。
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