研究課題/領域番号 |
19K00404
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
森 有礼 中京大学, 国際学部, 教授 (50262829)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フォークナー / 日本の印象 / 長野におけるフォークナー / 日本の若者達へ / 国民作家 |
研究実績の概要 |
2020年度は、当初の研究計画である、日本におけるフォークナーの受容と、アメリカ合衆国におけるフォークナーの国民作家としての評価形成と農地、前者に焦点を当てて研究を行った。特に冷戦期の文化外交でフォークナーが果たした政治的役割に関して、アメリカ合衆国における戦後のフォークナーの「人道主義的」受容と、そこで形成された作家のイメージが、フォークナーの来日時にどのように日本人に共有され理想化されたかについて、当時のフォークナーの来日記録書であるFaulkner at Nagano所収のエッセイ"IMpressions of Japan"と"To the Youth of Japan"、及びその記録映画であるImpressions of Japanを中心的な対照として、資料実証的に論証した。その研究成果は研究論文「冷戦期の日本文化外交と国民文学の必要性-国民作家フォークナーの創生-」として『中京英文学』41号(中京大学英米文化・文学会)に掲載された。また上記の主題に関連して、日本文学とフォークナーとの長きにわたる関わりについて論じた研究書(諏訪部浩一+日本ウィリアム・フォークナー協会編. 『フォークナーと日本文学』)の書評を、『アメリカ文学研究』57号 (日本アメリカ文学会)に掲載した。 これらの研究によって、戦後の日本におけるフォークナーの受容がどのように基礎づけられたかについて、主に来日前後の1950年代の社会文化状況と、敗戦からの復興下にあった当時の日本人の心理的機制に即して確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、日本におけるフォークナーの受容について、主に日本国内の資料を調査し、それに基づく評価と検証を行った。これは前述の論文「冷戦期の日本文化外交と国民文学の必要性-国民作家フォークナーの創生-」として今年度報告することができた。但し、新型コロナウィルス感染症の世界的蔓延のために、多くの研究計画を中断もしくは変更せざるを得なかった。そのために、研究の進捗は相当程度遅れていると判断せざるを得ない。 具体的には、2019年度に実施した戦後日本のフォークナー予備的調査に続き、2020年度実施予定であった、アメリカ合衆国におけるフォークナーの「国民作家」としての評価形成に関するミズーリ州立大学等での現地資料調査が、現時点まで実施不能な状況にある。このため、上記の問題についてはほぼ全く研究が進行していない状況にある。 本研究の遂行については、日本におけるフォークナーの受容に加えて、アメリカ合衆国における「国民作家」フォークナーの評価形成の過程を検証する必要があるため、この部分に関する研究の遅延は、本研究課題全体の達成に多大な影響を及ぼしている。 また日本国内におけるフォークナーの受容を詳細に調査するために、資料調査をさらに進める必要があるが、関連資料を所蔵する長野市図書館などの施設訪問も困難な状況にある。このため、現在実施している日本側の需要調査についてもこれ以上の進捗が停滞している状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究推進に向けて、必要とされる文献資料の収集が急務である。現在訪問予定の海外のアーカイブ施設では、必要とされる一次資料をインターライブラリーローンシステム等で入手することが極めて困難であるため、まずは国内のアーカイブ施設を、新型コロナウィルス感染症の状況を考慮しながら訪問踏査する予定である。具体的には、長野市立図書館所蔵の、フォークナー来日に関する一次資料群の踏査を徹底し、それに基づいて前述の論文「冷戦期の日本文化外交と国民文学の必要性-国民作家フォークナーの創生-」に対する補完的研究を推進する。 但し、国外アーカイブ施設所蔵の資料踏査は現時点では不可能と言わざるを得ない。この問題については、研究期間を延長し、新型コロナウィルス感染症が収束した時期に実施することも視野に入れて、研究スケジュールの再調整を検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウィルス感染症の世界的蔓延によって、当初予定していた海外のアーカイブ施設の訪問踏査が不可能となった。このため、同年度に予定されていたアメリカ合衆国ミズーリ州立大学フォークナー研究所などの施設訪問に予定されていた旅費が未執行のままとなっている。 また同様に、国外の著名な研究者を招聘して、本研究についての知見を得、また研究上の勧告指導や情報提供を受ける予定で計上していた人件費・謝金についても、来日の予定が立たず実行不可能となった。このため、同枠の予算も未執行のままとなっている。
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