研究課題/領域番号 |
19K00404
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
森 有礼 中京大学, 国際学部, 教授 (50262829)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドキュメンタリー映画 / フォークナー / 人種問題 / Michael Modak-Truran |
研究実績の概要 |
2022年度は、研究課題である「冷戦期の日米文化外交と国民文学の必要性―国民作家フォ ークナーの創生―」に関して、フォークナーの故郷であるアメリカ画集国ミシシッピ州オックスフォードで開催されたOXFORD FILM FESTIVAL2023にVIPゲストとして招待され、フォークナーのドキュメンタリー映画Faulkner: The Past Is Never Deadのプレミア上映会を中心とした研究企画に参加した。同映画フェスティヴァルは、独立系映画の新作を公開する映画祭であり、Faulkner: The Past Is Never Deadは、映画監督Michael Modak-Truran氏によるフォークナーの伝記再現ドキュメンタリーである。滞在期間は2023年3月1日~5日であり、滞在中に映画製作者であるModak-Truran氏主催のFaulkner VIP Welcome Reception、VIP tour of Rowan Oak、Premiere上映会及びFaulkner panelに参加し、同映画の監督及び映画制作関係者と、当該映画の製作に関する情報提供を受けるとともに、プレミア上映会にて同映画を鑑賞した。 このイベントへの参加の意義は、フォークナーの伝記を批評的観点からドキュメンタリー映画化した初の作品であるFaulkner: The Past Is Never Deadを、日本人として初めて観賞し、特に今日の米国における人種問題との関連についての批評的評価を確認したこと、及び映画製作に関する情報提供を受けることによって、現時点での米国でのフォークナーの最新の受容と評価を確認するとともに、パネルに参加することで、米国内外の第一線の研究者による同映画の批評的コメントを確認できたことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、米国内及び日本国内におけるフォークナーの国民作家としての批評的評価形成の過程を、冷戦期の米国文化外交という歴史的文脈において確認することである。このうち、日本国内における評価については、論文「日米における国民作家フォークナーの創生―Faulkner at Naganoからみる合衆国の文化外交戦略とその受容―」(中京大学英米文化・文学会 『中京英文学』 第41号, 1-24.2021)において成果報告を行ったが、新型コロナ禍のため、米国における研究調査が約3年に亘って実施できない状況にあった。今回、米国におけるプレミア上映会等に参加し調査を行うことで、現在のフォークナーの批評的評価を確認するとともに、フォークナーのキャリアの再評価を、それ以前(冷戦期以降)の評価と比較検証する機会を得ることが出来た。それによって、停滞していた米国におけるフォークナーの批評的評価に関して、研究推進のための新たな知見と情報を得ることが出来た。 本来であれば、2022年度を以て本研究は終了の予定であったが、この知見を得たのが2022年度末であったため、止む無く研究期間をもう一年延長したため、研究の進捗状況は昨年度の報告時の予定に対してやや遅れていると判断する。但し、2023年度末までには、本調査に基づき、新たに報告を完了することが出来ると予想されるため、慎重状況は「やや遅れている」。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、日本国内におけるフォークナーの「国民作家」創生と、それと対になる形で米国内における同様の過程とを比較検証することで完成する予定である。今後、米国内でのフォークナーの批評的評価確立と、フォークナーの「国民作家化」の過程を文献調査によって確認した後、今回の訪問調査において得られた最新の研究動向と批評的評価に基づき、研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、本来は2022年度末を以て終了の予定であったが、新型コロナ禍のために研究遂行が大幅に遅延していた。2022年度に、懸案であった米国での現地調査を実施することが出来たため、大半の研究予算を執行したが、今次渡航調査によって得られた知見について確認するための資料購入、及びその成果発表のための旅費として、2023年度に一定額を先送りする必要があった。次年度使用額が生じたのは、この目的のために予算を確保するためである。
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