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2020 年度 実施状況報告書

第一次大戦期の思想潮流から見る20世紀初頭のイギリスの児童文学、舞台芸術

研究課題

研究課題/領域番号 19K00407
研究機関甲南大学

研究代表者

岩井 学  甲南大学, 文学部, 教授 (70369859)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードAlgernon Blackwood / A Prisoner in Fairyland / Starlight Express / Bram Stoker
研究実績の概要

ミュージカルStarlight Expressの原作であるA Prisoner in Fairyland (Algernon Blackwood作)における一つの特徴として、二項図式が用いられている点が挙げられる。具体的には田舎/都会、子ども/大人、夢/現実、imagination/reasonといったものであり、それぞれの前者同士、後者同士が関連付けられている。これはある意味、常套的な提示の仕方である。原作におけるこれらの要素、そして第一次大戦期のイデオロギーが、ミュージカルにおいてどのように表現されているのか、いないのかについては、Starlight Expressに関する資料を分析する必要があるが、渡英できない現状においては、幾つかの当時の資料及び研究論文が入手できたのみである。これらの分析を進めながら、国内に資料がないか引き続き探していきたい。
またA Prisoner in Fairyland ではBlackwoodの代名詞ともいうべき心霊現象は大きくは描かれないが、登場人物たちが同じ夢を見るという設定が使われており’sympathy’がキーワードとなっている。またもう一つのキーワード「母親」からは、母性に対する憧憬と理想化が作品中にみられる。これらの点からA Prisoner in Fairylandには、前世紀末のイギリスからの影響がみてとれる。世紀末イギリスでは女性のあり方について様々な議論がなされ、New Womanなどがメディアを賑わせたが、A Prisoner in Fairylandにおける女性の描写、母性への憧憬には保守的な女性観が反映されているように見える。また同様に前世紀末に流行した催眠術などの医学/オカルト的な要素もテクスト中に散見されることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

原作において二項図式的に提示されている要素、そして第一次大戦期のイデオロギーが、ミュージカルにおいてどのように表現されているのか、いないのかについては、Starlight Expressに関する資料を分析する必要があるが、渡英できない現状において資料収集がままならない。またOxford University Pressに赴いての調査もできない状況である。
また国際学会も再々延期となり、今年度の発表の機会はなくなってしまった状況である。

今後の研究の推進方策

上記に記したBlackwood作品の分析から、19世紀後半にロンドンのLyceum劇場でacting managerをしていたBram StokerによるDraculaが一つの補助線として使えるのではないかと考えている。Draculaにおける女性登場人物たち(Lucy, Mina)は他の登場人物たちである男性中産階級の価値観に合うような造形がされている。また吸血鬼ドラキュラを追いつめるにあたって、催眠術的テレパシーが用いられるという共通点が見られる。
今後の研究の展開としては、Draculaの分析を掘り下げBlackwoodの作品の分析につなげること、そしてしばらく渡英が見込めない現在、Starlight Expressに関する国内にある資料の発掘、及びBlackwoodによって大戦期に執筆された他の作品の分析、また伝記的事実の調査をしていきたい。

次年度使用額が生じた理由

昨年度予定されており、今年度へ変更となった国際学会が、再度延期になったため、旅費の執行ができなかった。また資料収集に関しても渡航の目処が立たず旅費の執行ができなかった。
国際学会に関しては、来年度への延期となったため、科研費の延長申請をおこない、来年度に旅費を執行したい。また資料収集として渡英できる状況になれば、こちらも来年度に執行したい。

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公開日: 2021-12-27  

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