研究課題/領域番号 |
19K00409
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
一谷 智子 西南学院大学, 文学部, 教授 (70466647)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オーストラリア / エコクリティシズム / 環境と文学 / 戦争と環境破壊 / ポストコロニアル・エコクリティシズム |
研究実績の概要 |
本研究は、オーストラリアにおける環境文学・芸術を中心にエコクリティシズムの手法を用いて調査を行い、日本もしくは世界的な環境人文学へ貢献することを目的としている。本年度は、オーストラリアでの資料の収集や、オーストラリアの作家や研究者の日本への招聘講演ならびに学会でのシンポジウムを計画していたが、コロナ禍で計画を見送らざるを得なくなった。電子媒体の論文や書籍、また取り寄せが可能な文献を中心に資料の集取を行い、その精査と精読、考察に時間を費やした。オンラインを活用して、国内外の学会やシンポジウム、芸術イベント(メルボルン芸術祭、シドニー芸術祭、パース芸術祭、アデレード芸術祭)に参加し、情報の収集にも努めた。 本年は「環境と植民地主義」さらには「環境と戦争」の視点から考察を進めており、そうした主題の作品について広く文献リサーチを行い、国内外の研究者と意見交換を行った。中でもタスマニアの作家リチャード・フラナガン(Richard Flanagan)の小説『奥のほそ道』(_The Narrow Road to the Deep North_)の精読と文献調査を行い、本作品を植民地主義と二つの世界大戦が人間と環境へ与えた影響を描いたポストヒューマン的な視点を擁するテクストとして考察し、論文にまとめて発表した。本論文が、共著『語られぬ他者の声を聴く』(市川薫編、開文社出版、2021年)に収録されたことは、大きな研究成果の一つであったと言える。 また、オーストラリアへ難民としてたどり着いたクルド人作家Behrouz Boochaniの_No Freind but the Mountains_を難民の視点からの環境テキストとして分析進め、日本語への翻訳作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オーストラリアから講師(オーストラリア先住民作家Tony Birch)を招聘して6月にシンポジウムや講演会を行う予定であったが、コロナ禍で実施が敵わなかった。また、オーストラリアでの現地調査を夏と春に予定していたが、こちらも当分渡航を見合わせる必要があり、計画を大幅に変更せざるを得なくなった。オンラインを利用しての会合への参加やミーティングなどできる範囲で研究を進めてきたが、当初の予定からは遅れていると言わざるを得ない。日本にいながらにして収集が可能な資料は収集し、文献の読み込みなど、計画に修正を加えながら、できることから研究を遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
植民地主義・戦争・環境という視点から引き続きオーストラリを中心に太平洋地域の作品の分析を行っていく。本年度の予定としては5月に日本英文学会で「第二次世界大戦と英語圏文学」8月にエコクリティシズム研究学会で「トランスパシフック・エコクリティシズム再考」と題したシンポジウムを行う予定である。その発表原稿は、学会誌に研究論文として投稿する。さらに、昨年度に引き続き、Behrouz Boochaniの_No Freind but the Mountains_を難民の視点からの環境テキストとして分析進め、日本語への翻訳作業を行っていく。随時、国内外の研究者とのオンラインを通した情報交換を続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、計画していた海外の研究者及び作家の招聘講演やシンポジウムを実施できなかった。また、オーストラリアへ渡航しての現地調査が叶わなかたため。
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