研究課題/領域番号 |
19K00411
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
十枝内 康隆 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80359489)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヴィクトリア朝 / ファッション / ダンディズム / オスカー・ワイルド / マックス・ビアボウム |
研究実績の概要 |
本課題研究の1年目にあたる2019年度は,前年度まで科学研究費補助金を受けて研究を行っていた課題(「後期ヴィクトリア朝イギリスにおけるファッションと消費のダイナミズム」)を批判的に継承することを主たる目的として研究を開始した。これまで継続的に研究対象としてきた作家である,ウォルター・ペイター,オスカー・ワイルド,マックス・ビアボウム等のテクスト分析を行い,特にマックス・ビアボウムの服飾や消費文化に係る作品群について分析を深化させることを重視した。これと併せて,ダンディズム研究を中心としたモノグラフや雑誌論文の広範な渉猟と検討を始めている。これらの成果については,現在雑誌論文の執筆を行っており,2020年度中に投稿もしくは掲載の予定である。
また,日本ペイター協会,日本ワイルド協会等の関連学会に所属する研究者との交流を通じ,本課題に対する重要な示唆を受けることができた。特に,日本ヴィクトリア朝文化研究学会全国大会においては,最新の研究成果について知見を得るととともに,桐山恵子氏(同志社大学准教授), 池田祐子氏(中村学園大学准教授),加藤千晶氏(東京外国語大学兼任講師)等と本課題について討議する機会を得た。また,ヴィクトリア朝後期から20世紀初めにかけてのイギリスにおける男性性研究について先鋭的な研究を進めている野末紀之氏(大阪市立大学教授)の旧科研グループ(「男性性の構築と軍国主義精神の発揚―19世紀後半から20世紀初頭のイギリス文学周辺」)とは密接な連携を保ち,同教授ならびにメンバーの藤井佳子氏(大阪市立大学兼任講師),高橋章夫氏(大阪大学兼任講師)と共にファッション・男性性・消費をめぐる,同時代の文学テクス トや関連する理論的基盤について意見の交換を行なった。さらに,神戸ファッション美術館(神戸市灘区)において,本課題の遂行に不可欠となる資料の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで継続的に探究していたテーマを批判的に継承することで,初年度は着実な研究ができた。対象とする資料についても,徐々に幅を広げつつ継続して分析を行っている。また,他の研究者や研究グループとの交流や意見交換も予定通り進んでいる。
ただし,新たな視点や問題を追加することにより研究の精密化と深化を進めることを主眼としたため,論文の執筆が予定通り進まず,2019年度においては本課題に関連する業績を発表することがかなわなかった。また,年度末に実施を予定していた国内外の図書館等におけるリサーチが,新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止となったため,資料の収集に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染拡大のなかで見通しがつきにくい状況ではあるが,国内外の図書館,博物館でのリサーチをできるかぎり計画的に実施することで,対象となる資料の質と量の向上を図り,綿密な分析を加える。また ,他の研究者グループとの連携をより一層密にするとともに,所属する学会等において研究発表(口頭発表ならびに研究論文)を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新型コロナウイルスの感染拡大に伴い,年度末に予定していた国外の図書館,博物館における資料調査を行なうことができなかったため,その分の予算を使用することがなかった。また,当該年度はすでに入手済みであった資料の分析が中心となったため,物品費の執行がなかった。また,これらの事情から,新規資料の整理等のために必要する人件費についても執行していない。
(使用計画)新型コロナウイルスの感染拡大についてはいまだ見通しが立たない状況ではあるが,可能な範囲において国内外における資料調査を実施する。また,入手済の資料についての分析が順調であるため,今後は新規の資料の購入を進めるとともに,これらの資料の整理に必要とされる物品や人件費等についても執行の予定である。
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