研究実績の概要 |
本研究については、近世初期の様々な文献の、主として電子データでの調査・収集が基本的な作業となり、近隣の所蔵機関への出張によるアクセスを前提とした研究計画を当初立案していた。しかしながらJUSTICEコンソーシアムによるEarly English Books Online (EEBO)の年度内導入を条件とした優待購入と金額的緩和を受けて、研究期間全般にわたる、出張の時間的・経費的節約を実現すべく、研究経費の前倒し使用を申請した上で、研究代表者の所属機関である岩手大学への同データベースの導入に踏み切ることとした。 手続きを経て同データベースが利用可能となったのが、11月後半ということもあり、今年度の進捗状況は残念ながら未だ具体的成果としてまとめる段階に至ってはいない。しかしながら、シドニーの『詩の弁護』の周辺の文献だけでも、ゴッソンの『悪弊学校』との直接的・間接的影響関係を精査する価値のありそうな資料を既に多数発見し、精読に着手できているし、とりわけ同時代のミソジニーに関する文献におけるレトリックには、既に本研究課題である「虚偽記載」の極めて具体的な展開の実例を辿ることができている。一例を挙げれば、Swetnam, _The Woman-hater, Arraigned by Women_(1620)という戯曲と_The Araignment of Lewde, idle, froward, and unconstant women_(1615)という著作との関連性はverbal echoのみならず、異性嫌悪の言説の主題の一つの重要な起源として評価できるのであり、他方、それらをさらに遡る場合、聖書解釈・領有の問題系へと踏み込むことになる状況が、次第に明らかになりつつある。 また、当初計画にあった研究端緒におけるシドニーの『詩の弁護』についても、新たな視座を得た。
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