研究課題/領域番号 |
19K00413
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
小林 英美 茨城大学, 教育学部, 教授 (70277862)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 19世紀 / 英国文学 / 読書文化 / 出版文化 / パトロン(出資者) / 会員制有料図書館 / 予約購読形式出版 / 文学受容研究 |
研究実績の概要 |
本年度の研究は3つに大別できる。第1には会員制有料図書館における文芸嗜好の研究である。現地図書館等での一次資料の閲覧と収集が、今年度もパンデミックに起因する渡航・利用制限で実施できなかったため、昨年度と同様にGoogleBooksや古書のリプリント、オンライン上のアーカイブ(Robin Alston Library History Statistics等)の調査を続行したが、今年度は訪問予定施設の一つ(Nottingham Public Library)の研究員とコンタクトがとれ、提供された閲覧予定の稀覯書情報(19世紀読者の書き込み等)の精査を開始した。なお今年度から追加したスコットランド、アイルランド、そして北部イングランドの図書施設についての情報収集は現地調査が出来なかったために遅延しており、このまま次年度に続行することにした。 第2には、上掲のノッティンガム会員制有料図書館の会員と蔵書についての研究成果を「公共図書館の起源―ノッティンガム・ブロムリー・ハウスの場合」として加筆修正した論文を共著書として刊行した。現地調査が実現できれば「地方都市の図書施設と読者層の拡大」という広い観点で、この事例を他館についての研究と統合する計画である。 第3には、文芸嗜好研究の派生として、英国内外で相互影響があったゴシック・原始主義嗜好の伝播を、読者と蔵書傾向の観点から、ドイツのビュルガーの「レノーレ」翻訳の事例を論文化した。図書施設が海外作品の流行に果たした影響についての大きさがわかったので、今後の研究に活かす予定である。 パンデミックに起因する不自由さが、計画を遅延させているが、現地での資料調査が十分に実施できれば、研究計画の遅延を取り戻すことができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
パンデミックの影響によって、渡航が容易ではなく、また現地の図書施設等の利用も大きく制限されていたために、これまでに計画していた現地調査が実施できていないためである。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の中核となっている現地調査を円滑に遂行するためには、計画の2年間の延長(渡航ができなかった2回分)が必要であると考える。校務の都合もあり、1回(1年)に集約することは容易ではない。またこれまでも現地調査の代替として、オンライン上の資料と先行研究の収集と分析・検討を行っているが限界がある。 新型コロナウイルスの蔓延の動向に加えて、ロシア・ウクライナ情勢に起因する政情によっては、実施計画の延長又は渡航の断念を検討せざるをえない。なお、現地調査を見送ることになった場合は、引き続きオンライン資料と先行研究の収集と分析を行うことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのパンデミックによって、今年度も現地調査のための海外渡航ができず、また学会もすべてオンライン開催になったため、旅費の使用がなかった。これにより、本年度は旅費が使用できず、次年度に繰り越すことになった。 次年度は、年度末までに渡英が可能になれば、当初予定の現地調査・渡航の経費として使用する計画であるが、ロシア・ウクライナ紛争の長期間とそれに関わる政情不安があるので、これまで2回の渡航ができなかった分の研究計画延長を申請したいと考えている。 なお、物品費は主に書籍の予定であったが、主に現地での購入や複写を想定していたために使用がなく、関連する新しい研究書の刊行もなかったために、予定よりも支出が少なくなった。次年度に渡航ができれば予定通りに使用し、現地の研究者に複写等の代行措置を依頼できれば、そのための費用として使用することも検討している。
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