本研究は、第一次世界大戦100周年をめぐる英語圏諸国の文学・文化・政治を、国境横断的に分析し、大戦100周年の歴史的意義と課題を明らかにすることに取り組んだ。特に、従来の大戦の記憶において周縁化・忘却されてきた「他者」的存在(具体的には、中国人労働者、インド兵、アラブ兵、カナダ先住民、アフリカ兵、女性など)に注目し、各国の大戦100周年の公式の言説には収まりきらない、大戦の記憶の多様性と複雑性を明らかにし、大戦の記憶研究の新たな地平の可能性を開拓した。その最大の成果が、単著書『百年の記憶と未来への松明[トーチ]――二十一世紀英語圏文学・文化と第一次世界大戦の記憶』(松柏社、2020年)である。
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