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2023 年度 実施状況報告書

18-19世紀の英国小説の語彙と文体:社会における人の認知と言語変化の観点から

研究課題

研究課題/領域番号 19K00419
研究機関山口大学

研究代表者

松谷 緑  山口大学, その他部局等, 名誉教授 (70259737)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
キーワード英国小説 / 語彙 / 文体 / 近代英語 / Jane Austen / 英語史 / 品詞
研究実績の概要

本研究は、認知言語学的視点をもって、18世紀から19世紀の英国小説にみる英語の姿について、語彙面に注目しその意味と使用の文体的特徴を探るものである。通時的観点からも、18世紀から19世紀の時代の英語テクスト解釈に踏み込んだ語彙の解明に貢献する。社会的背景を踏まえ、コンテクストにおける語の意味を問い、時代の語彙体系を明らかにしようとする。また、更にそこから言語の意味変化の普遍的特徴を探る。時代の文化や社会的変動の中にあって、人はどのように自己を表現し、また自らの外界認知を表明するのかについて、語彙に重点をおき解明する。
これまでに、評価的意味の変化の過渡期にある語が小説において如何に用いられ、文体的効果をもたらしているかを明らかにすることに取り組み、また、文学テクストの丁寧な読みとその語彙や表現の解釈に関する研究として、文学研究者と語学研究者共同で、Jane Austenの作品『Emma』の注釈に取り組み、当該作品の全注釈について文法・語法・語彙の索引も整備した。そこで蓄積したデータを生かし、論文「Jane Austenの小説にみる品詞転換の文体的効果」において、小説の言語にみられる品詞転換の現象を記述しその文体的効果を明らかにすることに取り組んだ。一般的に、品詞をどう特定するかは議論のあるところである。辞書での記述も一つの語に複数の品詞が示されていることは多い。英語の歴史的背景からいえば、形態的特徴、統語的特徴いずれからも捉えることができ複雑である。実際の使用においては、言語使用者は、英語の歴史とは関係なく、自分の知識の範囲で自分の知っている語彙を駆使する。その点で、品詞転換という現象は、言語使用者の創造的な活動という捉え方もできる。小説における語りの観点から、一語レベルにとどまらず、句や節が文中で果たす役割も含めて分析を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウイルス感染症の全国的な拡大のため学会や研究会の実施が大きく制約をうけた。オンライン等でミーティングが行われるようになった後もブランクの時期の影響は大きく、また、大学の授業等での業務の負担も増えたままで、研究計画において予定通りの状況とはなかなかならなかった。
当初予定していた計画よりも随分時間がかかったが、オンラインでのミーティングやファイル交換を重ね、『Jane Austen Emma』第3巻(坂本武・莵原美和・高橋美帆・瀧川宏樹・谷口義郎・直野裕子・長谷川存古・松谷緑編著、関西大学出版部、2023)を完成させた。当該図書では、1巻から3巻までの全注釈について文法・語法・語彙の索引を整備しており、その成果によるデータを生かし、論文「Jane Austenの小説にみる品詞転換の文体的効果」では、小説の言語にみられる品詞転換の現象を記述しその文体的効果の一端を明らかにした。ただし、品詞をどう特定するかは議論のあるところで、英語の歴史的背景からいえば、形態的特徴、統語的特徴いずれからも捉えることができ複雑である。コーパス拡大による更なる検討が課題となる。一方で、実際の使用においては、品詞転換という現象は、言語使用者の創造的な活動という捉え方もできる。小説にみる人物像の構築、アイロニー、会話を描く話法における効果について、句や節が文中で果たす役割も含めた更なる検討も進めたいと考えている。

今後の研究の推進方策

研究のための時間を確保し、引き続き、当初計画において予定していた語彙リストについて研究を進める。
注釈図書の執筆に際し取り組んだ索引作成の際のデータは様々な視点から更なる分析と研究の資料として有効である。品詞の分類や品詞転換の現象について、英語の語彙が辿ってきた歴史的経緯、形態論的基準と統語論的基準の関係、具体的な文におけるその語の役割と意味といった観点から、多様な分析が可能であると考えている。引き続き、一語レベルにとどまらず、語が形成する句や節が文中で果たす役割も含めて分析を試みたい。
データについては、コーパスを拡大し、検討を進める。検討に際し必要な図書等資料の購入と検討を鋭意実施する。学会や研究会に参加する時間を確保する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の拡大のため、当初予定していた海外での調査研究や学会参加ができなかった。また、オンライン対応等を含めた大学の授業・業務等での負担が大きく、研究のための時間が確保できず、当初の計画通りに進まなかった。当初予定していたデータ収集が計画通り進まずその整理のためにあてていた人件費等は消化できなかった。
今後の計画としては、学会や研究会への参加と更なるデータ収集・整理と検討の時間を確保し実施する。また、図書や資料の使用による検討を進め、新たに必要とする図書等の資料の購入と検討をする。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Jane Austenの小説にみる品詞転換の文体的効果2024

    • 著者名/発表者名
      松谷 緑
    • 雑誌名

      山口大学教育学部研究論叢

      巻: 73 ページ: 325-332

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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