研究課題/領域番号 |
19K00426
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
志渡岡 理恵 実践女子大学, 文学部, 准教授 (80597526)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イギリス / 女子教育 / キャリア形成 / 少女雑誌 / 女子大生小説 / ジェンダー / 教養教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀後半から20世紀前半のイギリスにおいて、主に10代の少女たちに大きな影響を及ぼした女子大生小説と少女雑誌を研究対象とし、女子の高等教育に関する言説が女性のキャリア形成にどのように関与したのかを明らかにすることを目的としている。2019年度は、まず、歴史学における女性のキャリア形成に関する先行研究を参照し、女子教育改革と女性の社会進出がどのようなプロセスを経て進行し、女性たちにどのような変化をもたらしたのかを確認した。次に、L・Tミードの女子大生小説と彼女が編集した少女雑誌『アタランタ』を収集し、高等教育機関の情報、卒業後のキャリアのための助言、知的な領域で活躍する女性の紹介などの記事を分析して、当時の少女たちの教育とキャリア形成に関する関心のありかと得ていた情報を明らかにした。 今年度の研究から明らかになったのは、ミードが関与したこれらの文化的媒体は、女子の高等教育および社会進出を後押しする言説に溢れており、そこには、ミードや記事を執筆した多くの女性たちが次世代の少女たちに向けた期待と支援の想いが強く表れているということである。特に、当時大きな影響力を持ちながらまだ研究の進んでいないミードの女子大生小説において、女子の高等教育の意義が、専門職への道を切り拓くことばかりでなく、教養教育と社交(ネットワーク構築)にも見出されていた点を明らかにしたことは意義深いと考えられる。これは、従来の研究にはなかった視点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた女子教育と女性のキャリア形成に関する研究書、および19世紀後半から20世紀前半までの女子大生小説と少女雑誌の収集と分析を順調に進めることができ、それらの作業によって得た知見を、論文と口頭発表というかたちで研究成果として公開できたため、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に当たる2020年度は、当初の予定通り、まず、モダンガールをターゲットにした少女雑誌『ガールズ・レルム』の不足分を収集し、女子教育および女性のキャリア形成に関する記事をピックアップして分析する。次に、19世紀後半から20世紀前半までの少女文化に関する研究書と論文を集め、女子教育と少女文化の関係について理解を深める。そして、これら2つの作業を通して得られた知見を、論文と研究発表というかたちで研究成果として公表する。 研究計画の変更は1点予想される。当初は、所属学会に参加して最新の研究動向を把握し、英国で研究成果の発表(WHNの年次大会)と資料収集(ケンブリッジ大学図書館、大英図書館)を行う予定であったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、学会の中止や英国への渡航困難の可能性が極めて高くなった。対処法としては、海外での資料収集や学会への参加を2021年度に延期することを考えている。
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