研究課題/領域番号 |
19K00426
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
志渡岡 理恵 実践女子大学, 文学部, 教授 (80597526)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジェンダー / 教育 / キャリア / 小説 / 女性誌 / イギリス |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀後半から20世紀前半のイギリスにおいて、女子高等教育が女性の未来を切り拓いてきた軌跡と、今後切り拓いていく可能性を、文学研究の視座から検討することを目的としている。今年度は、女子大生小説、少女雑誌の女子教育・キャリア形成に関する記事、その他の関連資料を収集・分析し、その成果を研究発表と論文のかたちで公表した。 9月に行った研究発表「自立自営への道―英国の少女小説・雑誌における女子教育をめぐる議論」では、女子教育改革により新たに設立された女子教育機関が、長きにわたりイギリスの「紳士教育」を担ってきたパブリック・スクールおよびオックスブリッジをモデルにしつつ、それぞれの教育機関および女子学生たちの状況に応じて独自の方針を織り交ぜて調整を行い、女子学生たちが将来に備えられるように心を砕いていたことを明らかにした。また、19世紀末に女子教育視察のために渡英した本学の学祖である下田歌子の著作『泰西婦女風俗』を分析し、当時の女子教育のありようを複眼的に理解することを試みた。このような試みは国内外でこれまでほとんどなされていない。 3月刊行の論文「英国ケンブリッジ大学女子学寮とInternational Women’s Day」では、ニューナム・カレッジをはじめとするケンブリッジ大学女子学寮がジェンダー格差を是正するために行っている数々の取り組みとその背景にある女子(高等)教育の理念を明らかにした。本論文には、筆者が2016年度にケンブリッジ大学で行ったリサーチの成果が含まれており、独自の経験に基づいた新たな知見が提供されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の本年度の計画は、①モダンガールをターゲットにした少女雑誌『ガールズ・レルム』と、19世紀後半から20世紀前半までの少女文化に関する研究書と論文を収集・精読し、女子教育と少女文化の関係について理解を深め、②所属学会に参加して最新の研究動向を把握し、英国で研究成果の発表(WHNの年次大会)と資料収集(ケンブリッジ大学図書館、大英図書館)を行う、であった。 ①については順調に進んだ。②については、新型コロナウィルスの影響で学会が中止になったり、海外への渡航が不可に能になったりしたため、計画通りには進まなかった。しかし、オンラインで開催された学会に参加することで、最新の研究動向は把握することができた。また、研究成果は、国内での研究発表と論文の刊行というかたちで公表することができた。よって、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる2021年度は、以下の作業を行う予定である。 ①最も発行部数の多かった少女雑誌『ガールズ・オウン・ペーパー』の不足分を買い足し、『アタランタ』および『ガールズ・レルム』との比較を行う。 ②未入手の女子大生小説を購入し、著者の経歴などについて調べ、可能なかぎり網羅的な女子大生小説のリストを作成のうえ、女子大生小説の全体像を把握する。 ③女子大生小説を分析し、高等教育やキャリア形成に関する少女たちの意識のありようを明らかにする。 ④歴史学の先行研究から得た知見と、少女雑誌・女子大生小説の分析を照らし合わせ、総合してまとめる。そして、最終的な研究結果を、所属学会等における口頭発表および論文のかたちで発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、学会参加や海外での資料調査が出来なくなったため、当初の予定より支出額が少なくなった。2021年度も引き続き新型コロナウィルスの影響が続くと予想されるため、2020年度の残額は、資料費として使用する予定である。
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