研究課題/領域番号 |
19K00427
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
末廣 幹 専修大学, 文学部, 教授 (70264570)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 王政復古期 / 演劇 / コメディ・オヴ・マナーズ / 都市空間 / パーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、王政復古期から18世紀に上演されたコメディ・オヴ・マナーズという喜劇の一ジャンルに注目することで、このジャンルが、ロンドンのウェスト・エンドにおける特定の社交空間(劇場、パーク、ニュー・エクスチェインジのようなショッピング・モール)を舞台にすることで、その場を支配していたマナーズをどのように定式化していたのかを明らかにすることにある。初年度には、1666年のロンドン大火後から王位継承排除危機が収束する1682年までに焦点を当て、内乱期において政治的意味を帯びていたパークが王政復古期において社交空間として多様な機能を帯びていく中で、この時代に上演されたコメディ・オヴ・マナーズが、社交空間のマナーズの表象を通じて、内乱期のパークのイメージを再利用し、ときに新たなイメージを創造することで、都市空間の変貌に介入しようとしたのかを分析した。 とくに、ウィリアム・ウィッチャーリーのLove in a Wood(1671年)とジョージ・エセレッジのThe Man of Mode(1676年)におけるセント・ジェイムズ・パークの表象を比較検討することで、ロンドン大火後に、パークを帯びていた意味を検討し、都市空間の変容を明らかにした。ウィッチャーリーのLove in a Woodにおいてパークは日中ジェントルマン階級にとっての社交のための空間であるが、夜間になると、リベルタンたちの漁色の場となり、夜間に足を踏み入れただけで醜聞の原因となる。他方で、エセレッジのThe Man of Modeでは、パークにおけるモールは、リベルタンであるドリマントにとってアイデンティティの脆弱性を露呈する舞台となっている。大火という災禍を免れたセント・ジェイムズ・パークは当初、都市の内部の「避難所」とみなされたのだが、1670年代にはすでに重層的な意味を帯びていたことを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、王政復古期から18世紀にかけての最新の資料を渉猟し、コメディ・オヴ・マナーズに見られる都市空間の表象のさまざまな意味を検討することができた。 しかし、研究成果を学術論文としてまとめられていないので、当初の計画以上に進展しているとは判断できない。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度において王政復古期に焦点を当てて行った研究の成果に基づいて、その範囲を18世紀以降にまで拡張していく予定である。 さらには、2019年度の研究成果を論文としてまとめ、日本英文学会の地方支部会などで発表する予定であるが、コロナ禍のために、学会開催が相次いで中止になっており、発表の場があるかに不安がある。 コロナ禍のために、今後の国内及び海外の調査も現時点では見通しが立っておらず、調査の計画に変更が余儀なくされそうである。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内における業務が予想以上に多忙だったため、国内外の調査旅行に行けなかったために、差額が生じた。 次年度には、コロナ禍が収束し次第、調査旅行を行い、旅費として使用したい。
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