ハーマン・メルヴィルの諸作品の中に埋め込まれている、アイルランド/アイルランド人/アイルランド人移民にかかわる、メルヴィルのIrish matters とでも呼びうるかもしれない1つの大きな主題の発見、あるいはその剔抉と解明という研究成果は、当の主題がこれまでのところ内外のメルヴィル研究において十全に追究されてきたとは言い難い主題であるだけに、小さくない学術的意義を有している。Irish mattersを論ずることは植民地主義、帝国主義、戦争、飢饉あるいは飢餓、移民問題などを論ずることでもある限りにおいて、本研究成果は、今日的な社会的意義も有していよう。
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