研究実績の概要 |
本研究は、アナイス・ニンの自伝的テクスト群(編集版日記、初期の日記、無削除版日記、フィクション、書簡等)をパリンプセストとして読み重ね、ジェンダー/セクシュアリティ研究、自伝研究、精神分析理論、親族研究等の知見を駆使し、21世紀のアナイス・ニン像を構築する試みである。 この数年、ニン研究の新たな資となる書籍の出版が、1次資料(Anais Nin, Trapeze. Anais and Joaquin Nin,Reunited)、2次資料(Anita Jarczok, Writing an Icon. Kim Krizan, Spy in the House of Anais Nin. Clara Oropeza, Anais Nin: A Myth of Her Own. Tristine Rainer, Apprenticed to Venus) ともに相次いだ。それは慶賀すべきことだが、2次資料に関していえば、作品・作家研究より人物論、知人による回想の類が多いのが実態である。 が、出版されたばかりの、ニンと父の往復書簡集Reunitedは本研究において決定的に重要な資料であり、今後精査・精読したい。 研究1年目に当たる2019年度は、上述の資料のほかにも、ニンを主要テーマとした最初のジャーナルSea Horse全8冊、The Winter of Artificeパリ版、House of Incest初版、関連研究領域の資料収集と整理、分析に時間を費やした。 成果としては、アナイス・ニン研究会のメンバーの共訳で、インタヴュー集『アナイス・ニンとの対話』が鳥影社より近く出版される予定である。また、2019年1月に出版した『アナイス・ニンのパリ、ニューヨーク』のパリ編を英語・フランス語でバイリンガル出版する企画があり、その英語訳を行い、追加の取材・資料収集をパリで行った。
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