研究課題/領域番号 |
19K00433
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
星 久美子 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (20572142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオフィクション / メタバイオグラフィー / モダニズム / ポストモダニズム / ライフ・ライティング |
研究実績の概要 |
本研究は、平成26年度から科学研究費の助成を受けて始められた「メタバイオグラフィー」とはなにかという学術的「問い」を探求する一連の研究の集大成を目指すものであり、新たに「バイオフィクション」とはなにかという学術的「問い」への解を示すことを目的とする。近年、「バイオフィクション」は、新たな文学ジャンルとして注目され、数多くの作品が出版されており、それらの作品について、主に国外で盛んに議論されている。本研究は、ポストモダンの時代に書かれた「バイオフィクション」の中でモダニスト作家が伝記対象となっている作品に着目し、その表象、とくにモダニスト作家の小説の技法や特徴が再現されているのかどうかという点を考察し、モダニズムからポストモダニズムへの連関性を明らかにする。最終的には、伝統的なバイオグラフィーから、モダニズムの時代に誕生した「メタバイオグラフィー」を経て、ポストモダンの「バイオフィクション」へと連なる「ライフ・ライティング」の系譜を示すことを目指す。
一連の研究の全体像は以下の通りである。1. 伝統的なバイオグラフィーの系譜、2. 「メタバイオグラフィー」誕生前夜、3.「メタバイオグラフィー」誕生、4. ポストモダンの「メタバイオグラフィー」:「伝記を書いていく過程を明らかにする伝記」、5.「メタバイオグラフィー」から「メタバイオグラフィカル・フィクション」へ、6.「バイオフィクション」とはなにか、7.「バイオフィクション」におけるモダニストの表象、8. もうひとつの「メタバイオグラフィー」:「伝記についての伝記」
上記リストの中で、1~4、および8についてはこれまでの一連の研究で考察しており、そのうちのいくつかについては論文として発表する予定である。同時に、5~7について、すなわち「バイオフィクション」とはなにかという学術的な問いを主に探求する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に予定した研究計画をほぼ遂行している。すなわち、平成31年(令和元年)度は、「メタバイオグラフィー」の定義をまとめて、論文として執筆し、学術誌に発表した。また、「バイオフィクション」とはなにかという定義の確立を目指し、ポストモダンの時代に書かれた「バイオフィクション」の中からモダニスト作家が伝記対象となっている作品を読み、モダニスト作家の小説の技法や特徴が再現されているかという観点から検証を行った。その過程で、夏期休暇にオックスフォード大学附属図書館で関連分野の最新情報を収集した。
また、夏期休暇中にはMemory Studies Summer Schoolに参加し、モダニズムにおける重要な主題のひとつである「記憶」の問題について知見を深め、W. G. SebaldのThe Emigrantにおける「記憶」の表象について口頭発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、モダニスト作家の小説の技法や特徴が再現されている個別の作品を詳しく考察する。令和2年度の上半期は、ヘレン・ダンモアの『暗黒のゼナー』をロレンスの作品に頻出するシンボルの使い方との関連で考察し直すとともに、ロレンスを伝記対象とした他の作品と比較する予定である。下半期は、『暗黒のゼナー』の考察で得た知見を元に、他のモダニスト作家(ヘンリー・ジェイムズ、ヴァージニア・ウルフ、ジェイムズ・ジョイス、キャサリーン・マンスフィールドなど)について書かれている作品を考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当該年度に予定していたPCの購入を次年度に延期した。 (使用計画) 次年度請求額と合わせて、PCを購入する予定である。
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