研究課題/領域番号 |
19K00436
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
森岡 裕一 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (20135635)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 禁酒物語 / 家庭小説 / 感傷主義 |
研究実績の概要 |
令和二年関西外国語大学『研究論集第111号』に「耐婚・離婚・復婚ー女性禁酒物語作家の結婚観」と題した論文を投稿。多くの女性作家の作品に見られる結婚観を三つの型に分類、それぞれを様々なテクストを分析しながら比較考察した。あまり知られていない女流禁酒物語作家にスポットをあて、禁酒物語をつうじてジェンダーギャップを論じた。 令和三年にはそれまでの禁酒物語研究の総括として単著『ボトルと涙ー19世紀アメリカ禁酒物語論」(金星堂)を上梓。第一部では、アメリカ文化における酒のもつ意味、飲酒・禁酒の文化史、禁酒運動における禁酒物語の位置づけを整理した。第二文ではこの分野の代表格T.S.アーサーの文学をスモールタウン小説、共依存等の概念を導入し長柄、初期から後期にわたる作品像全体を考察した。続く第三部ではハリエット・ストウの代表作『アンクル・トムの小屋』を禁酒物語として読み直し、彼女の作品群を家庭性(ドメスティシティ)の視点から統一的に考察した。第四部では女性禁酒物語作家を積極的に取り上げながら、禁酒物語にひそむジェンダーの問題を分析した。その際、当時社会問題化しつうあった離婚論争に禁酒物語がどう取り組んだか、あるいは伏在する男性性保持の問題等を切り口にして、本質的に家庭の物語である禁酒物語に見いだされるジェンダーギャップの問題を浮き彫りにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の中心は禁酒物語のテクストをいかに多く集めるかにある。ところがテクストの多くは粗悪紙による出版のため市中に出回らず、大学図書館等にかろうじて保存されているため、現地に赴き調査収集を行う必要がある。ところがコロナ禍によりアメリカ出張が阻まれ、当初の予定が大幅に狂ってしまった。その間、インターネット等を駆使して資料を探したり、入手できた資料の分析に傾注するなどして一定の成果は確保してきた。とはいうものの、やはり、アメリカにおいて調査ができなかったことは研究の進展を確実に遅らせている。いっぽうで、出張期間を取らずにすんで浮いた時間を利用して、これまでの研究成果をとりまとめ中間報告の形で単著を刊行できたことは、研究をふりかえり今後の方向性を再度考えるいい機会となったことは思わぬ利点であった。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカ出張が再開できるようになったことで、現地での資料調査と収集ができるようになったので、たとえば、THE PITCHERS OF COLD WATER(1835), LETTERS FROM THE ALMS=HOUSE(1841)など精選した重要資料を入手することに最大の努力をしたい。テーマ的にはアーサーと並ぶ代表的禁酒物語作家ルシアス・サージェントを包括的に分析し、その作品世界を考察する。次にエリザベス・スタントン、ハリエット・ストウ、フランシス・ウイラードら奴隷解放、女性解放、禁酒運動を荷った同時代の女性三人の人生と、禁酒物語をふくむ作品を比較しつつ分析し、解放運動に関わるアメリカ女性の代表例として彼女たちの軌跡を追うことで、ジェンダーの視点から19世紀アメリカ社会のありように新たな光を当てたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の中心はアメリカ出張により現地の図書館等で入手困難な資料を調査し収集することにある。そのため旅費の占める割合が大きくなるが、、コロナ禍により米国出張が困難となり旅費を繰り延べせざるをえなくなり、その分大幅な残金が発生した。出張開となった次年度にその遅れを取戻し研究を進展させるために、残金の次年度使用が必須となっている。
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