研究課題/領域番号 |
19K00444
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
久保 拓也 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (80303246)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アメリカ文学 / ジェンダー学 / マーク・トウェイン / ウィリアム・ディーン・ハウエルズ / 「失敗」・「失敗作」の考察 / 障がい学 |
研究実績の概要 |
前年度に続き、米国大学図書館で収集済みであった19世紀から20世紀のアメリカ社会における男性性に関連する歴史的な資料や男性性に伴う諸問題や身体性に関わる記録文書、また当時の文学作品に現れているそれらの表象などの精査を継続することで研究を進めることができた。今年度はそれらに加えて、新規に入手した作家研究やジェンダー学、障がい学関連書籍の精査が中心となった。19世紀後半から20世紀前半のアメリカ人作家、特にマーク・トウェインやウィリアム・ディーン・ハウエルズ、あるいは彼らと交友を持った人々が残した作品や公私にわたる文書の考察が中心となった。その中で「自伝」あるいや「自伝的文書」の考察が重要なものとなったのだが、一般的に「自伝」や「自伝的な文学作品」を他の人たちが見ることができる公的な形で残すことができるのは、社会における何らかの「成功者」に限られる。なかでもいわゆる「自伝」は、ひとりの人生の出来事の誠実な記録であることを期待されるが、そこから虚飾性や物語性を取り除くことは難しい。この研究は、世に出ることの少ない無名の人々の文書により多く残されていると考えられる様々な記録を拾い上げ、他の社会と比べ抜きん出て「成功」を重視するアメリカ社会における「失敗」や「失敗者」が果たす特有の役割を考察することを続けている。当研究において2019年度を含め継続的に実施してきた米国大学での一次資料収集は残念ながら今年度も全く行うことができなかった。オンライン・データベース上にある資料の活用を積極的に行っているものの、主要な資料が現地を訪問して閲覧することにより利用できるものが中心であるので、それが不可能であったことが遅延に影響している。研究のために必要な資料の入手については引き続き難しい状況が続くと思われるが、2022年8月にアメリカで開催される国際学会への参加機会を利用し、研究を進展させる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度までの研究進捗には、昨年度までと同様、若干の遅れを発生させてしまった。本来であれば研究最終年度ではあったが、研究期間を1年間延長することとした。資料の精査等、研究は進展しているものの、行う予定であった海外での資料の入手が難しい状況が続き、当初想定した方法での予算執行が難しかった。加えて、成果の発表機会として考えていた学会の予定変更が発生した。2021年8月に米国で開催されるはずだった国際学会(マーク・トウェイン研究の最新成果が発表されるThe Ninth International Conference on the State of Mark Twain Studies)に参加を予定していたが、新型コロナウィルス感染症の世界的流行の影響により、開催が一年間の延期となった。また、これまで交付されていた補助金を活用し、2019年度まで継続的に行ってきたカリフォルニア大学での研究資料収集が、渡航の困難はもちろん、図書館の長期間閉鎖によりこの2年間機会を作ることができていない。延期となっていた上記の学会は2022年8月に開催されることともなり、研究環境は改善しつつある。米国の大学図書館での資料収集については2022年度の実施も難しいことが考えられるが、これまでの成果を元にした研究論文の発表を実施していく。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は2022年8月にアメリカで開催される国際学会での研究発表に向けて論文の準備をまずは進める。また、できるだけ早い時期に米国のカリフォルニア大学を訪れ、資料の閲覧と分析を再開するとともに、現地の研究者との研究協力を再開する。研究論文についても掲載に向けて引き続き努力を重ねる。補助金をより有益な形で使用できるように現研究期間を1年間延長するが、これ以上の遅延がでないように上記の計画通りに研究を行う。これまでの文献や資料を基に最終的な成果を発表できるように準備を進めるとともに、準備中の未邦訳アメリカ文学作品の翻訳出版が早期に実現するように試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際学会での発表や米国大学図書館での資料収集、そして研究打合せの為の国外旅費を使用できなかったことが大きく影響した。2022年度は米国での研究発表が決定しており、国外旅費を始め計画通り執行する予定である。
|