わが国で〈終活〉という言葉が聞かれるようになって久しいが、どれほど「自分らしさ」を 謳おうとも、行儀よく人生を「始末」するためのこうした活動は、死の規格化・制度化を助長するばかりで、生者にとっての死の意味を改めて 問い直すことはない。本研究は近代初期に立ち戻り、死のシステム化が確立する以前の西洋社会において、特に女性が各ライフ・ステージでどのように死に備えたかを明らかにすることで、現代社会の〈終活〉のあり方に一石を投じるとともに、日常生活のなかで残された資料を調査の中心に据えたこと、またメタファー分析を取り入れたことにより、従来の研究とは異なるアプローチから、近代往生術を研究することができた。
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