本研究課題の最終年度にあたる令和4年度には、アメリカ演劇におけるホームの表象に関する研究のうち、前年度の研究実績としても言及した③パンデミックと都市部における連帯および④ラティーノのコミュニティの21世紀初頭における変化について、継続的に研究を行った。具体的には、8月に行われた日本アメリカ演劇学会のシンポジウムの司会および講師として報告を行い、さらに単著論文を収めた共著書が出版された。また家庭における女性の役割の歴史的変遷と文化的多様性に関しては、令和5年度から新たに開始する研究課題(アメリカ演劇におけるケアの表象)へと接続してさらに研究を進めるべく、シンポジウムの企画と準備を進めてきており、令和5年度から順次開催する予定である。 アメリカ演劇における家族の表象を、その歴史的変遷という縦軸と文化的多様性という横軸が織り成すダイナミックなプロセスと捉え、アメリカの家族という理想像に引き寄せられる動きとそこから遠ざかる動きが交錯するところに、緊張感に満ちたドラマが生み出されることを例証しようという本研究課題の目的は、コロナ禍による計画変更とスケジュールの遅れはあったものの、概ね順調に達成できた。調査を進めるうちに、アメリカの家族劇というカテゴリーに含まれる作品の数は予想よりもはるかに多いことが明らかとなり、規定の期間内にすべてカバーすることはかなわなかったが、研究方法上、より精細な区分やテーマの絞り込みが必要であることが明らかとなった点は大きな収穫であった。 期間の大半では、オンラインによる口頭発表が主な活動となった。インタビューや現地取材が十分に実施できなかった点は悔やまれるが、今後は準備段階にある原稿を論文等にまとめて公開することで、研究活動の総括を行う予定である。
|