研究課題/領域番号 |
19K00453
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
辺見 葉子 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 教授 (40245428)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | J. R. R. トールキン |
研究実績の概要 |
本研究は、J. R. R. トールキンのオックスフォード大学着任以前、1920年~1925年リーズ大学において教鞭を執っていた時代から、『ホビットの冒険』出版以前の、トールキンの初期未刊学術草稿の研究が主眼である。トールキンのゲルマン語文献学者としてのキャリアの初期に属する学術原稿は、オックスフォード大学ボドリアン図書館に所蔵されており、現地での閲覧のみが許可される手稿である。トールキンの「ケルト」観や「ゲルマン」観、その変遷を考察する上で重要な資料でありながらも、未だ言わば手つかずの状態で研究が行われていないものである。 2019年度は、当初予定していた3月における長期の調査出張が、新型コロナウィルス感染拡大により急遽中止を余儀なくされたため、海外での現地調査に依存する本研究に直接関わる業績を上げることは出来なかった。しかしながら、ボドリアン図書館アーカイヴィストや英米のトールキン研究者とのパーソナルなレベルでの情報交換は途切れることなく行うことが出来た。 国内における学会活動としては、日本ケルト学会研究大会において、チャールズ・オ・ドネルというオ・ドネル・レクチャー基金の提供者(トールキンの'English and Welsh'はオックスフォード大学におけるオ・ドネル・レクチャー・シリーズの第一弾)の「ケルト」観に対するトールキンの反論に関する研究発表を行った。またより一般向けには、ケルト神話についての事典項目執筆など、トールキンおよびケルティシズムについての研究は引き続き行った。 2020年度にイギリスへの渡航(ボドリアン図書館での調査)が可能になるかどうか、現在ではまだ不明な状況ではあるが、夏、もしくは春には2019年度に果たせなかった分を含めた調査期間を確保したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年夏は体調がすぐれず海外出張を見合わせたため、3月には夏に行けなかった分も合わせてオックスフォード大学ボドリアン図書館でのトールキンの草稿調査を行う予定であった。しかし予想外の新型コロナウィルス感染の拡大により、予定していたイギリス出張を取りやめざるを得なくなってしまった。 ボドリアン図書館に所蔵されているトールキンの手稿原稿は、写真撮影も許されておらず、閲覧室でのトランスクリプション作成が最重要であるが、パンデミックという不可抗力により現地に行くことが叶わなかったため、手稿調査は進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、夏期長期休暇にボドリアン図書館での調査が可能となることを期待しているが、夏にまだ渡航が出来ない場合には、2021年春(3月)に長期の出張を計画する。 一方で、1920年~1925年のトールキンのリーズ大学時代から、1937年の『ホビットの冒険』出版以前の時期における、「ケルト」観および「ゲルマン」観の潮流ついては、研究を進めることは国内においても可能であるので、万が一海外出張が困難となった場合には、研究テーマの主眼を、手稿調査そのものから、「ケルト」や「ゲルマン」の概念に関する時代の潮流やその変遷へと、移行させることも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
英国オックスフォード大学ボドリアン図書館における、トールキンの初期手稿原稿調査のための長期海外出張を3月に計画していたが、新型コロナウィルス感染拡大により、海外出張を取りやめざるを得なくなり、予定していた使用額(渡航費用、宿泊費、図書館利用料など)が未使用となってしまったため、次年度使用額が生じた。 2020年度は、夏期のイギリスへの渡航が可能な状況であれば、ボドリアン図書館での手稿調査のための長期出張を計画する。また、2020年夏に予定されていた、アメリカで開催されるTolkien Symposiumが中止され、2021年夏に延期となっているので、可能であれば、シンポジウムでの発表参加のためアメリカ出張も行いたいと考えている。 万が一夏の出張がまだ難しいと判断される場合には、2021年3月にボドリアン図書館での手稿調査のための長期出張を行う。
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