研究課題/領域番号 |
19K00453
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
辺見 葉子 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 教授 (40245428)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トールキン手稿調査研究 |
研究実績の概要 |
2022年夏には、コロナ禍で3年間に亘りストップを余儀なくされていた、海外での研究調査が再開でき、7月28日から8月24日まで、英国オックスフォード大学ボドリアン図書館トールキン・アーカイブ手稿調査を行うことが出来た。 トールキンの'English and Welsh'の出版に向けての準備上、必要となる手稿原稿のチェックをはじめ、トールキンの初期の学術研究(特にLydneyに関するもの)を中心に、手稿原稿のトランスクリプトを進めた。トールキン・アーカイブを管轄するキャサリン・マクルウェインや、大学古文書室の担当者とも密に連絡を取り合い、特にキャサリン・マクルウェインには、判読の難しい手稿原稿の解読に長時間マンツーマンで付き合ってもらい、現地調査でのみ可能な貴重なやり取りが出来たことは、大きな成果となった。 10月23日には、鹿児島大学で開催された日本ケルト学会の研究大会において、トールキンの「ケルト観・妖精観」と切り離すことのできない、アイルランドの妖精について、「アイルランドの初期フォークロア集にみる妖精たち」と題した口頭発表を行った。日本ケルト学会の活動としては、学会50周年の記念論文集に「妖精と「ケルト」、そのつながりから見えてくるもの― ブリテン諸島におけるイメージ交錯の過程 ―」と題した論文(査読あり)を執筆した。この記念論文集は2023年出版される。 The Journal of Inklings Studiesに投稿されたウェールズのMabinogiとトールキンの関係を論じた論文の査読を依頼され、論文査読を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
三年間、海外での手稿研究がコロナ禍で出来なかったことが最大の理由である。大学でのオンライン授業対応などで研究に費やせる時間と余裕がなく、研究の点では大きな空白状態となってしまった。2022年夏に三年ぶりに渡英が叶い、失われた時間を取り戻す方向へと向かえたが、三年間の間にオックスフォード大学ボドリアン図書館のシステムも大幅に変わり、キャッチアップに予想以上の時間と労力を要した。
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今後の研究の推進方策 |
5月21日の日本英文学会では、招待講演者として「トールキンとケルト」と題した講演を行う。
科研費の補助期間の延長を認めていただけたので、2023年度の夏(8月末から9月の予定)にもオックスフォード大学ボドリアン図書館トールキン・アーカイブ手稿調査を継続する。 この期間、9月初旬にオックスフォード大学、コーパス・クリスティ・コレッジのBeppe Pezzini教授の主催するトールキンのシンポジウム・研究発表大会に招聘されているので、9月初旬、オックスフォード大学にて口頭発表を行う。 また、夏の出張中には、ウェールズ・ナショナル・ライブラリー所蔵のトールキンの'English and Welsh'出版稿のゲラの調査も行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年3月にイギリス出張(オックスフォード大学ボドリアン図書館トールキン・アーカイブ手稿調査)を当初予定しており、航空券の購入や宿の予約も済ませていたのだが、どうしてもはずせない学務と出張期間が重なってしまったこと、体調が整わなかったことなどから、3月の出張を断念し、もう一年の延長を申請、許可された。 3月分の海外出張費としてプールしておいた額を2023年度にそのまま回すこととなり、8月末から3週間ほどボドリアン図書館トールキン・アーカイブ手稿調査のため渡英するための旅費として使用する計画を立てている。9月初旬にオックスフォード大学でトールキンに関するシンポジウム・研究大会が開催予定であり、私も口頭発表を行う予定である。 また、トールキンの'English and Welsh'の出版稿ゲラで、ボドリアン図書館には所蔵されていないものが、ウェールズ・ナショナル・ライブラリーに所蔵されていることが最近判明したため、夏の出張ではウェールズでの調査も行いたいと考えている。
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