研究課題/領域番号 |
19K00455
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
佐々木 真理 実践女子大学, 文学部, 教授 (30297436)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 女性の身体 / アメリカの女性作家 / ケイト・ショパン / 優生学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、アメリカ合衆国の社会と文化に大きな影響を与えた、優生学に基づく身体に関する思想や言説が、女性作家作品における女性の身体の表象にどのように作用したのかについて、ケイト・ショパンを中心に考証することで、当時の性差と身体に関する規範と、それに対する女性作家の反応と戦略を明らかにすることである。さらに性差と身体の問題がどのように女性作家の作品と交差したのか、その過程と余波を分析することで、アメリカ女性文学の原点にある問題を突き止め、現在の女性文学を読み直す通時的な視点を獲得することを最終的な目的とする。21世紀に入ってもなお、19世紀の後半から女性作家たちの作品のテーマとなってきた身体をめぐる同じ問いが繰り返されていることに注目し、現在まで続く女性作家たちの問いかけの根底にあるものをとらえ、女性文学の理解と分析に関する新たな視点を提供することにより、現代社会へのアクチュアルな問いかけを試みるものである。 本年度は、まずは、ケイト・ショパンの短編作品において女性の身体に刻印された性差と規範が、当時の性差と身体をめぐる言説、特に優生学に基づいた言説にどのように影響を受けているのか、また、応答しているのか、という問いについて、ケイト・ショパンの経歴の後期に雑誌Vogueに掲載された作品を中心に分析し、当時の優生学に関する言説がどのように波及しているのかについて考証した。同時に、優生学の受容に関する理解を深めるために、関連の資料を収集し、概要的な知識と理解を深めた。その結果、当時創刊が相次いだ雑誌における女性像の表象も本テーマに大きく関わっていることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ケイト・ショパンに関する資料、および、アメリカ社会における優生学の受容とその影響に関する資料については、体系的に収集することができ、一定の成果を達成することができた。また、ショパンの短編の分析と掲載雑誌との関わりについても考察を深めることができ、本年度の目標はおおむね達成したといえる。しかしながら、新型コロナウィルス感染症の拡大のため、海外への渡航が難しくなったことが影響し、本来であればアメリカ合衆国に資料調査のために出張する予定であったがそれが不可能となったため、現地での調査を進めることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、雑誌Vogueを中心に分析を進める中で、当時の女性を対象とする雑誌における女性像の構築と表象に優生学的な要素が大きく関わっていることがわかってきたため、今後は分析対象を当初の予定よりも広げ、19世紀後半から創刊された女性雑誌の変遷とそこに掲載された女性作家たちの作品をたどることで、本研究の目標達成につなげたい。また、今後もしばらくは社会的状況からアメリカ合衆国への渡航が困難と思われることから、現地での収集を考えていた資料について、インターネット等を利用した入手などの手段を模索し、またその他研究遂行に必要な資料をさらに収集することで、研究を滞りなく進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に予定していた、アメリカ合衆国での資料収集及び調査が、新型コロナウィルス感染症の拡大のため困難となり、予算として計上していた旅費を使用しなかったため、次年度の使用額が生じたものである。2020年度については、引き続き海外への渡航が困難な状況が予測されるため、資料を迅速にかつ正確に入手し分析できるような研究設備の整備を行い、同時に、関連する資料を体系的に入手することへの支出を計画している。
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