研究課題/領域番号 |
19K00456
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
松田 美作子 成城大学, 文芸学部, 教授 (10407611)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 視覚文化 / エンブレム / エリザベス一世 / ジェームズ一世 / マグダラのマリア表象 |
研究実績の概要 |
近代初期イングランドにおける視覚文化と、ジェームズ一世の王権表象の関連を明らかにするためには、ジェームズ一世が引き継いだエリザベス一世の王権表象に関して考察する必要がある。そこで、エリザベスにもジェームズにも共通する神話に由来する英雄や想像上の生き物を扱ったエンブレムを中心に資料を収集した。とくに、オクスフォードのアシュモレアン博物館の寓意的絵画、ヘンリー・ピーチャムのジェームズ一世に献呈したエンブレム集、『ブリタニアのミネルヴァ』を調査した。 さらに、ジェームズ一世の表象に大きな影響を与えたエリザベス一世の表象を考察した。彼女と同時代に大流行したバロック美術におけるマグダラのマリア表象がエリザベス一世の表象にも影響を与えた可能性を、初期の宗教改革者、John Baleが出版したエリザベス11歳の翻訳、マルグリット・ド・ナヴァールのLe Miroir de L'ame Pecheresse, The Glass of the Sinful Soul(1544)の扉絵に描かれたイエスと足元に跪く女性(エリザベス)の図像の分析をした。1540年代に神の表象を描き、「大陸」の図像を取り入れていたことから、プロテスタント国家となったあとも、イコノファオビア一色ではなかったことを明らかにした。この点を1550~90年代というエリザベスが即位後のイングランドの宗教文化におけるエンブレムを中心に考察を進めた。その成果は、第58回シェイクスピア学会セミナー、「シェイクスピアと同時代(前後)の宗教と視覚文化」において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年は、1月にオクスフォードにて資料収集を行えたが、さらに3月にロンドンのBritish Libraryにおいて、ヘンリー・ピーチャムのエンブレム写本の詳細な調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスの流行により、渡英が実現できなかった。そのため、執筆中の論考を完成することができなかった。次年度、新型コロナウィルスの流行が収まったら、渡英してこの遅れを取り戻したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、可能であれば渡英して、British Libraryに収蔵されているヘンリー・ピーチャムのエンブレム写本の調査を行い、エリザベス一世とは異なるジェームズ一世の王権表象の側面を明らかにしたい。そうすることで、ジェームズの長男、ヘンリー皇太子に相続させたいジェームズが考える王権の在り方が理解できるであろう。ヘンリーは1612年、18歳で早世する。のちの清教徒革命を導くチャールズ一世の王権の考え方にも影響を与えたと考えられるので、今後17世紀中庸までの王権表象について考察を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、渡英して行う予定であった海外出張が、新型コロナウィルスの流行により、実行できなかったため、次年度に延期することとなったため。
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