研究課題/領域番号 |
19K00456
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
松田 美作子 成城大学, 文芸学部, 教授 (10407611)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 初期近代英国の宗教文化 / エンブレムブック / 出版文化 / 視覚芸術との関連 |
研究実績の概要 |
昨年度に続いて、新型コロナウィルス流行のため、海外渡航が不可能であった。そのため、海外の大学図書館や大英図書館などで、初期近代のエンブレム表象を調査することができなかったが、これまでに収集した資料を整理し、まとめる作業をおこなった。とくにジェフリー・ホイットニーのエンブレムブック、A Choice of Emblemes (1586)のソースの詳細を確認した。「大陸」の主なエンブレムブックをよく受容し、レスター伯のネーデルラント遠征に加わったレスター派と言われる貴族、軍人や文人に向けた個人的なエンブレムに変容していることが看取できた。パトロンであったレスター伯のネーデルラント遠征という政治キャンペーンとの深い関りを明らかにした。また、本研究課題の中心的エンブレム作家、ヘンリー・ピーチャムの著作について、「大陸」のエンブレム、たとえばチェーザレ・リーパのIconologiaとの比較をおこない、英国でのリーパ受容を考察した。そして彼がどのようにジェームズ一世とその嫡男、早世したヘンリー皇太子を表象したのか、その意図を追求することができた。 そのほかのエンブレム作家たちも含めて、それらの成果は、2021年12月、金星堂より『初期近代英国のエンブレムブック』として出版することができた。そこでは、エンブレムブックと当時の出版文化との関連や、エンブレムが社会とどのような接点をもって展開されたのか、とくにレスター伯のヨーロッパのプロテスタント教徒との連携を目指す宗教的、政治的目的との関係を考察した。 海外調査を行えなかったが、その分、今までの資料の見直しや整理を行うことができ、今後の研究のさらなる発展の可能性を見出すこととなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初期近代の視覚文化の一角を占めるエンブレムブックや、エンブレムの応用表現を調査するには、海外の図書館や美術館、教会などでそれらを調査することが必要であるが、本年度も新型コロナウィルスの流行により、海外調査を行うことができなかった。できるだけネットでも資料を探したりしているが、思うように収集できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの流行が収まり、海外渡航が可能となった場合、英国のエンブレム写本を調査するため、大英図書館に、またシェイクスピア作品と視覚文化との関連を調べるためにほかの研究機関を訪れたいと考えている。それらの結果を踏まえて、ジェームズ一世、チャールズ一世の表象と、エンブレムを中心とした視覚文化について論をまとめるつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行によって、今年度計画していた海外での資料収集や調査が全く行えなかった。そのため、使用する予定の旅費が残ってしまった。次年度、新型コロナウィルスが少しでも収まり、海外調査が可能となった場合、今年度行うはずであったロンドンの大栄図書館でのエンブレム写本の調査、「大陸」のエンブレムブックやエンブレム表象を収集するための海外調査を予定している。
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