ジェームズ朝イングランドにおける王権表象に、神話的な英雄や超自然的生物が利用されていることを、同時代のエンブレム表象を援用して解明することを目指した。そこで、もっともジェームズ一世、ヘンリー皇太子に近しいヘンリー・ピーチャムが作成したエンブレム手稿とMinerva Britanna(1612)を中心に資料収集と実地調査を行った。その成果の一部は2021年『初期近代英国のエンブレムブック』(金星堂)にまとめた。ピーチャムのエンブレムが忠実に再現されたブリックリング・ホールのロングギャラリーを実地に調査し、王の地位を不死鳥やマーキュリーといった神話的象徴を用いて支えていたことを明らかにした。
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