研究課題/領域番号 |
19K00460
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
和氣 一成 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (10614969)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | trauma / slavery / Lovecraft Country / neo-slave narrative / Candyman / spectrality / testimony / diaspora |
研究実績の概要 |
早稲田大学教育・総合科学学術院学術研究第70号1~19ページ(2022年3月)に論文"Where is your fire?: Horror, Traumatic Pasts and the Becoming of History in Lovecraft Country (HBO 2020)"を発表した。本作品はH.P. Lovecraftの超自然的な物語に、1950年代をはじめとするアメリカの様々な歴史的出来事を融合したものである。全10話で構成されており、各エピソードにはそれぞれアメリカの奴隷制度、ジム・クロウ法、エメット・ティル殺害など、様々な歴史的出来事、人物といったノン・フィクションとフィクションというジャンルの混交を特徴としている。語りの面でも時間軸が直線的に語られず、視聴者の積極的な関与が要求されており、内容・形式的にもハイブリッドなテキストである。本論ではこの混交を"Collage Aesthetics"として積極的に評価し、ジャック・デリダの憑在論とジル・ドゥルーズの歴史生成の理論に基づき、本作品にみられる奴隷制度の亡霊性と歴史の攪乱的要素を指摘した。 また、中央大学人文科学研究所『人文研紀要』98号(頁未定2023年度刊行)に論文(単著)"Candyman, the Specter of Past, Present, and Future―The Analysis of Candyman (2021) through Hauntology―"を発表した。本論考ではCandymanを奴隷制度とトラウマの準拠枠に則って分析した。デリダの憑在論以外にフレドリック・ジェイムソンの"spectrality"という概念に基づき、本作品中に見られる歴史攪乱性を確認した。さらに、現在、過去、そして未来までも見据えた対ネオリベラリズム人種観が提示されている点を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、海外での学会発表を断念しなくてはならず、分析対象作品は上記のように変更になった。しかし上記のように2021年度には論文を2本("Where is your fire?: Horror, Traumatic Pasts and the Becoming of History in Lovecraft Country (HBO 2020)と"Candyman, the Specter of Past, Present, and Future―The Analysis of Candyman (2021) through Hauntology―")発表しており、対象作品は変更になっても「アメリカ文学・文化におけるトラウマとしての奴隷制度の表象」というプロジェクト前提としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はコロナの状況も見ながら、海外での論文発表を念頭において、プロジェクトの最終年度を締めくくりたい。まずはToni MorrisonのLove(2003)の研究において断片化した形式で紡がれていく物語に奴隷制度が憑在しているさまを検証する予定である。またAugust WilsonのThe Piano Lesson (1987)では(1)憑在する亡霊がいかに奴隷制度の歴史・記憶を表象しているか(2)祖先の奴隷としての過去にどのように対峙するのかの2点を検証するという推進方策を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、海外研究機関でのリサーチ、および海外学会での研究発表を断念せざるを得なかったため、研究内容の大幅な見直しを迫られたため。
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