本研究は1970年代のイギリスで制作されたState-of-the-Nation Play(以下SNPと略)と通称される劇作を対象としている。この概念が用いられた文脈を再構築し、これらの劇作が訴えた問題を検討した。これら劇作と、1950年代以降の「怒れる若者たち」の作品との差異を明らかにして、SNPは社会主義への幻滅が背景にあることが分かった。同時期に興隆するフェミニズム演劇や同性愛者たちのマイノリティ演劇は、自分たちの権利の拡大に注力していく。それにたいしてSNPは、様々な権利と利権を調整するためのプラットフォームの構築を目指し、歴史的な視座を求める特徴を有していることが明らかになった。
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