研究課題
二十世紀、文学は大きく変化した。十九世紀に黄金期を迎えた小説・抒情詩・演劇というカテゴリーにしたがって、この時代に書かれた文学を記述することはできない。それらの形式は解体されていったが、だからといって書くという行為そのものが衰えたわけではない。二十世紀文学の作家たちは、精神分析や人類学等の新たな学問を積極的に吸収し、身体論やイメージ論という、哲学、社会学、美術史学等さまざまな学問領域で研究された問題意識を共有し、相互に影響を与えながら執筆活動を行った。いったいどのような視点から見れば、作家と哲学者等の区別を取り払い、この時代の文学を綜合的に把握することができるのだろうか。2021年度においては、オンライン研究会が発展したことを受けて、この疑問を解明するための研究会を四回開催することができた。(以下、敬称略)──橋本一径(早稲田大学/表象文化論)、伊藤亜紗(東京工業大学/ヴァレリー、身体論)「身体論の展開」2021年5月29日──王寺賢太(東京大学/ディドロ、現代思想)「歴史とユートピア」2021年7月20日──中田健太郎(静岡文化芸術大学/ブルトン、マンガ研究)、森田直子(東北大学/テプフェール、マンガ研究)「支持体について」2021年10月23日──郷原佳以(東京大学/ブランショ、デリダ)、塩塚秀一郎(東京大学/ペレック、日常生活研究)「文学を問う知/知を問う文学」2021年12月18日研究開始当初は、二十世紀において経験というものがどのように認識され、表現されたかという問題の解明を目指した。ところが、研究会を重ねるにつれ、現実と虚構のせめぎあいについて考える、という視点が重要になってきた。捉えようとする現実と、現実に迫るための方法(虚構)がいかに多様な形を取り得るのか──これこそが文学と人文科学の境界に広がっている光景ではないかという仮説を立てることができた。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 6件、 査読あり 12件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 図書 (5件)
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