研究課題/領域番号 |
19K00467
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
三浦 清美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20272750)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロシア / キリスト教 / 東方正教 / テオーシス / アウトクラトール / 説教 / 中世 |
研究実績の概要 |
コロナ禍と戦争のためロシアでの文献ならびに遺跡調査ができないので、昨年同様にこれまでの研究成果を取りまとめ、発表することにした。2020年度の研究成果として『キエフ洞窟修道院聖者列伝』、2021年度の研究成果として『中世ロシアのキリスト教雄弁文学(説教と書簡)』を出版したが、2022年度の研究成果としては『中世ロシアの聖者伝(一)-モスクワ勃興期編』を出版した。 ロシアによるウクライナ侵攻の歴史的背景について記した『ロシアの思考回路』(扶桑社)を出版したが、これも本テーマの研究成果の一部としてよいかと思う。この書籍は、本研究テーマで翻訳を続けてきた中世ロシアの修道士たちの作品を丁寧に読み解くことによって、このような状況下では無視されがちなロシア側の論理について説明したものである。この戦争を一刻も早く終わらせるため一助になればよいと望んでいるが、研究者からも、研究者ではない一般読者からも反響があり、評価されているようである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、ロシアの文書館でアルカイフ・ワークをする予定であった。2019年度は、この線にしたがってロシア、サンクト・ペテルブルグのロシア国民 図書館でアルカイフ・ワークを行い、モスクワの瘋癲行者聖人である『ワシーリイ伝』についての貴重な書籍を収拾することができた。2019年度は年度末にもう 一度ロシアに渡航する計画であったが、コロナ禍のためあきらめざるを得なかった。2020年度になると、渡航が全面的に不可能になり、現地での文献と遺跡の調査はできなくなった。研究計画は大きく修正されることになったが、しかしながら、研究課題として設定していた中世ロシア聖者伝文学の研究の成果発表に方向性を切り替えることができた。2021年3月には、33年間研究をつづけてきた『キエフ洞窟修道院聖者列伝』が学術的刊行物として日の目を見た。2022年3月には、『中世ロシアのキリスト教雄弁文学(説教と書簡)』を刊行し、2023年1月には、『中世ロシアの聖者伝(一)-モスクワ勃興期編』を刊行した。2023年度には、さらに『中世ロシアの聖者伝(二)-モスクワ確立期編』を刊行予定であるが、現行の準備はすでに完了し、2023年には刊行できる見込みである。おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も、コロナ禍と戦争のためにロシア渡航によるアルカイフ・ワーク、ロシア人研究者の招聘による共同研究は、かなり難しいと判断せざるを得ない。このため、「ロシア聖人伝」に関する現在までの研究成果を、整理し、公開する方向性を維持していきたいと考えている。 本年度は、『悪魔に乗って旅したノヴゴロドのイオアンについての物語』、『ローマ人アントーニイ伝』、『ボロフスクのパフヌーチイ伝』、『ヴォロコラムスク修道院聖者列伝』、『ベロオゼロのフェラポント伝』、『ベロオゼロのマルチニアン伝』、『ワラアム修道院についての物語』、『ソロフキのゾシマとサッヴァーチイ伝』を掲載する『中世ロシアの聖者伝(二)-モスクワ確立期編』を刊行して本研究を締めくくりたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究費を使用してその研究成果として、さらに1冊の書籍(『中世ロシアの聖者伝(二)-モスクワ確立期編』)を予定しているが、出版社のキャパシティの問題があり、2022年度中の刊行が間に合わなかった。原稿自体はすでに出来上がっており、本年度中には刊行できることがはっきりしている。
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