研究課題/領域番号 |
19K00468
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
桑原 聡 新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (10168346)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヘルマン・ブロッホ / Die Verzauberung / ケルト文化 / 群衆狂気論 / 地上における絶対的なもの / 神話と宗教 / 自然 / 自然との共生 |
研究成果の概要 |
本研究は、H.ブロッホの未完の小説『誘惑者』(1934-1935)における文学と政治の関係を次の二点に即して、すなわち、1)『誘惑者』における「神話」とケルト文化の役割を明らかにし、同時に、2)それらがこの作品の政治的要素とどのように関連しているかを解明することを目指した。 H.ブロッホの『誘惑者』が、彼が「群衆狂気論」で展開する、「人権」を「地上における絶対的なもの」と措定する政治思想と、宗教と神話の復活という自らの思想を、ケルト文化を背景とし、ナチズムの思想とは差異化し、作品化していることを解明した。だが政治と思想と「自然との共生」の統合はブロッホの突然の死によって完成されなかった。
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自由記述の分野 |
ドイツ文学・ドイツ文化
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
ヘルマン・ブロッホH.Brochの作品解釈は従来主に時代批判、文化・政治批判、ナチズム批判という観点で行われてきた。しかしながら研究代表が明らかにしたように『ウェリギリウスの死』(1945)にはAugustusに対する批判という形で現れる権力批判のみならず、ヨーロッパで古来宇宙の調和を表す「天球の音楽」モチーフ、さらにはユダヤ教神秘主義カバラの言語観が主題をなしている。同様に未完に終わった小説『誘惑者』(1934-35)ではナチズム批判と並んでケルト文化に代表される神話が主題化されており、ブロッホの死によって中断されはしたが最終的に「自然との共生」という思想にブロッホが達する可能性を提示した。
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