研究課題/領域番号 |
19K00474
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松田 浩則 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (00219445)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 書簡 / 日記 / 官能性 |
研究実績の概要 |
ポール・ヴァレリーの『カイエ』とカトリーヌ・ポッジの『日記 1913年-1934年』、さらに二人の書簡集『La flamme et la cendre』を中心とした研究を行った。主だった成果としては、2019年12月21日、京都大学人文科学研究所でおこなった招待講演「カリンとポールの物語 - あるいは《Ave atque Vale》」と、その発表原稿をもとに書かれた同名の論文の公刊である(『愛のディスクール』、ヴァレリー「恋愛書簡」の詩学、2020年3月、水声社、91-165ページ)。これらの研究と発表を通して、これまで知られていなかったヴァレリーとポッジとの交流のありさまが明らかになった。とりわけ、ポッジの詩《Ave》と《Vale》の成立過程を初めて明らかにするとともに、その日本語訳を示すことによって、今後の研究にも道を開くことになったと思われる。この過程で、これまでの研究で見られた資料の読解のミスもいくつか指摘することができた。 また、日本ヴァレリー研究会の紀要「ヴァレリー研究」(第8号、電子版)にヴァレリーがルネ・ヴォーティエに宛てた書簡集「Lettres a Neere」(ミシェル・ジャルティ編纂)の長文の書評を掲載した(2019年11月)。また、同研究会のホームページにポッジの『日記』の読解をめぐるエッセイを寄稿した。 さらにベルジュラック市郊外にポッジ家が所有していた領地《ラ・グローレ》を日本人研究者としては初めて訪れ、現所有者のソフィー・アダン夫人に領地を案内いただくとともに、貴重な資料を収集した。今後の研究に生かす所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りに研究が進んでいると判断する。本研究で一番の核となるカトリーヌ・ポッジの『日記 1913年ー1934年』の解読が進み、全体像の素描までこぎつけることができた。またベルジュラック市在住の歴史学者で「Les Pozzi- Une famille d'exception」(『ポッジ家、比類のない家系』、2019)の著者ジャン=フィリップ・ブリアル・フォントリヴ氏の知遇を得て、ポッジ側の未公刊資料をいくつかを入手することができた。これらの資料を総合的に検討することによって、ヴァレリーとポッジの相克が単に恋愛レベルに留まるものではなく、創作レベルにまで及ぶものであることをより具体的に示すことができるはずである。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に示した通りに研究を進めていく予定である。最終的には、ほとんどまだ日本では知られていないカトリーヌ・ポッジの詩作品とその『日記 1913年-1934』とヴァレリーの諸作品との相関関係を明らかにすることを目指しているが、今年度は二人の交流が転機を迎えた1922年前後に書かれた二人の著述に焦点をしぼった論文を書き上げる予定である。この際、ヴァレリーがポッジの友人でもあったルネ・ド・ブリモン男爵夫人に送った未公刊の手紙も考察対象に加える予定である。それと並行して、ポッジの詩集の解読と注釈を進める予定である。これらの研究を通して、ヴァレリーとポッジの相関図のかなりのものが明らかになってくるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナヴィールスが蔓延したことによりフランスでの資料収集期間(3月)を当初の計画より大幅に短縮せざるを得なかった。今年度もまたヴィールス感染状況を考慮しなければならないが、事情が許すようなら、繰越金を主にフランスでの資料収集に充てる予定である。
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