これまで非ユダヤ的、保守的思想・文学の潮流のなかに位置づけられていたコメレルの批評的、学問的業績に関して再評価を行った。まずコメレルの最も重要な詩論である「抒情詩の本質について」および「自由韻律の詩と詩人の神」をとりあげ、ゲオルゲ、ホフマンスタール、ハイデッガーら同時代の思潮のなかに位置づけるとともに、アガンベンによる言及の指摘やド・マンのリルケ論との比較を介して、今日的視点からその意義を明らかにした。また、学問的著作、エッセイ、翻訳などにおけるコメレルの「世界文学」への多様なアプローチを検証し、「世界文学」に対するコメレルの「読みのモード」(ダムロッシュ)を明らかにした。
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