| 研究課題/領域番号 |
19K00477
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| 研究機関 | 広島市立大学 |
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研究代表者 |
大場 静枝 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (60547024)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | ブルターニュ地方の民族ナショナリズム / ブレイモール / カミーユ・ル・メルシエ・デルム / ロパルス・エモン / ブルターニュ文学 / ブルトン語 / 『バルザス＝ブレイス』 |
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| 研究実績の概要 |
本研究は、19世紀後半から第2次世界大戦終結時までの約100年間において、ナショナリズム活動を行ったブルターニュ出身の作家、特にブルトン語とフランス語の二言語で作品の発表を行った作家たちの思想を調査することで、ブルターニュ地方の民族運動と文芸運動の関係を明らかにし、それによってこの時代のブルターニュ文学の輪郭や特徴を描き出すことを目的としている。
2020年度は、まず2019年度の研究成果を論文「『バルザス=ブレイス』に見るブルターニュ地方の民族文学の誕生――19世紀における国民概念の成立とロマン主義を背景に」にまとめた。本論文においては、18世期末から19世紀前半にかけて国民概念の形成とロマン主義が深く関係していたこと、それらを結びつける要素の一つに「民謡の発見」があったこと、さらには、ブルターニュ地方のナショナリズムの萌芽に民謡集『バルザス＝ブレイス』の存在があったことをを明らかにした。
続いて、2019年度の研究で明らかになった知見を基に、『バルザス=ブレイス』に影響を受けた3人の民族ナショナリスト詩人・作家（ブレイモール、カミーユ・ル・メルシエ・デルム、ロパルス・エモン）に注目して文献・資料の収集と分析に着手した。ブレイモールに関する研究は終了し、その成果は論文「信仰と郷土愛に生きた詩人ブレイモール――フランス・ブルターニュ地方の民族運動を背景に」に結実した。本論文では、まず地方分権主義が誕生した背景をブルターニュの貧困と言語状況から考察した上で、当時の民族運動を牽引した地方分権主義連合のイデオロギーを明らかにした。次にブレイモールの生涯と作品、論壇における彼の発言の分析を通して、当時の民族運動の一端を浮かび上がらせるとともに、ブルターニュの民族運動がブレイモールの文学的営為にもたらした影響を検討した。ル・メルシエ・デルムとロパルス・エモンの研究は、現在継続中である。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は予定していた研究方針に従って、第二段階の研究に着手することはできたが、その進捗は想定よりも遅れている。第二段階の研究とは、19世紀末の「ブルターニュ地方分権主義連合（URB）」の形成からその発展と分裂、「ブルターニュ国民党（PNB）」の誕生と急進派勢力の台頭、直接行動の活発化、両大戦間期から始まるナチス・ドイツとの関係など、ブルターニュ地方の民族ナショナリズムをめぐる時代背景を考察するとともに、当時発表された文学作品、作家たちの論壇での発言を分析することで、地方のナショナリズムと文芸運動との関係を検証することである。
2020年度の前半では、2019年度に収集した資料や文献をもとに、詩人ブレイモールおよびカミーユ・ル・メルシエ・デルムの作品の分析を行い、その成果を論文にまとめた。ブレイモールの研究については終了した。カミーユ・ル・メルシエ・デルムの研究については、現在、研究成果となる論文を作成しており、終了の目途が立っている。
一方、新型コロナウィルス感染症の流行により、2019年度3月、2020年度9月及び2～3月においてフランス出張ができなかったため、両大戦間期及び第二次世界大戦中のブルターニュ地方のナショナリズムとロパルス・エモンに関する資料や文献の収集がほとんどできなかった。そのため、2020年度に予定していた資料・文献の収集と分析を2021年度に延期せざるを得ず、研究成果の発表が遅れる見通しである。
また研究活動と並行して、「ブルターニュのナショナリズムと言語文化」に関する研究書を発表することも本研究課題の目的となっているが、こちらもフランスでの資料・文献の収集ができなかったことから、執筆が大幅に遅れている。
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| 今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究では、第一段階及び第二段階の研究で得られた研究成果に基づいて研究を第三段階に進めるが、2020年度においてフランス、特にブルターニュ地方での資料・文献の収集と分析ができなかったため、一部第二段階の研究活動を継続する。
第3段階の具体的な研究内容（予定）は、両大戦間期に誕生した「ブルターニュ国民党（PNB）」と急進派勢力の台頭、直接行動の活発化、両大戦間期から始まるナチス・ドイツとの関係など、ナショナリズムをめぐる時代背景を考察するとともに、ロパルス・エモンの作品及び文芸雑誌『グワラルン』やPNBの機関紙『ブレイス・アタオ』を分析することで、ブルターニュ地方のナショナリズムと文芸運動との関係を検証することである。
この研究を遂行するため、新型コロナウィルス感染症の流行状況も注視しつつ、可能であれば9月及び2022年2月～3月にフランス国立図書館（パリ）とブルターニュ地方の市立図書館及び大学図書館（ブレスト、レンヌ）において、文献の閲覧や資料の収集を行う予定である。なお、2019年度及び2020年度同様、Web 上で閲覧が可能な資料について、「研究資料としての使用」の立場を守り、かつ公開機関や関係者への使用の許諾を求め、出典を明示したうえで使用する。これまで築き上げた個人的な信頼関係により取得した資料や文書については、その好意的な協力に感謝し報いる意味でも、取り扱いには十分に留意する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、約67万円の残額が生じた。これは以下の2点の理由による。
①前年度の繰越金（2020年3月のフランス出張の中止による）に加え、2020年9月及び2021年2月～3月に予定していたフランス・パリ及びブルターニュ地方での文献調査・資料収集が、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行の影響で中止になったことから、旅費に余剰金が生じた。
②上記のフランス出張が中止になったことで、フランスの国公立の図書館における書籍や文献の複写・複製費等の費用が予定計上額を下回った。
2021年度は、新型コロナウィルス感染症が終息していればフランスでの調査期間を延長し、次年度使用額は文献の複写・複製費用及びフランス出張旅費に充当する予定である。
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