計5年にわたる研究期間において、主に2本の軸を設定して考察を行なった。ひとつは、ギュスターヴ・フロベールが1848年に友人マキシム・デュ・カンとともに行なったオリエント旅行についての分析である。『ボヴァリー夫人』や『感情教育』の作者として知られるフロベールだが、彼の近東旅行に関してはこれまでまとまった研究はなかった。二つ目の軸は、ポーランド出身の大貴族ヤン・ポトツキの残した小説、紀行文についての検討である。日本ではまだほとんど知られていないこの大作家の著述を通じて、19世紀ヨーロッパにおける「自他」のありようを考察した。
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