研究課題/領域番号 |
19K00480
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
初見 基 日本大学, 文理学部, 教授 (90198771)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 戦後ドイツ / 戦後言説 / 集団の罪 / RAF |
研究実績の概要 |
2021年度においては、前年度に引きつづき海外渡航の制限のために、予定していたドイツの諸機関での資料調査をいっさいなしえなかった。そこで資料収集の点では計画を大幅に変更・縮小せざるをえず、暫定的に古書店を通じて入手可能な1940年代後半から70年代にかけての関連書籍を極力網羅的であることを目指して収集した。とりわけ下記のとおり研究計画に微修正があったため、それに応じて1950年代から70年代の社会運動系の資料を参照する必要が生じ、この関連で資料の不足を補った。 実質的な研究にあたっては、当該年度には以下の検討を進めた。 1)前年度に引きつづき、1945年以降の数年間における"Kollektivschuld"(集団の罪)をめぐる諸議論を追い、これをまとめる作業を継続した。そのなかではとりわけ、現在刊行中のヤスパース全集で"Schuldfrage"(『罪の問題』)の収録された巻が刊行されたため、これを再検討し、「集団の罪」から「集団責任」への議論の転換に関して確認作業を進めた。ただしこれは比較的規模がおおきな研究となるため、いまだ論文成果のかたちで公開できていない。 2)申請時の研究計画は1960年代初頭までと時代限定をしていたためそこには含まれていなかったものの、中途より本計画の枠組みのなかで扱うこととなった、1950年代半ば以降の西ドイツの再武装・核装備への反対運動から、60年代の議会外反対派(APO)の出現、そして1968年の象徴される騒擾、さらには1970年代のRAFらのテロリズムにいたる社会運動の流れを、「戦後言説」の観点から分析する作業を進めた。そこからは、ナチ時代の過去を挙げることによって自らの正統性を根拠づける言説の流れが確認され、これを丹念に追う作業をつづけた。この成果の一部は、資料の翻訳というかたちで、2022年度中に公開ができる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」欄にすでにしるしたとおり、海外渡航制限のため、資料収集については大幅な規模縮小を強いられて、計画どおりに進んでいない。とりわけ1945年から49年の占領期、連合国側が編集発行したドイツ語諸新聞は日本の諸機関ではほとんど所蔵されておらず、閲覧することがまったくかなわなかった。 そこで資料の分析・検討についても、当初の研究計画を変更して、書籍として入手できる資料を中心に進めることを余儀なくされた。さらにこの間の研究以外の面での教育・事務作業等の諸業務の増加にともない、計画どおりに研究時間を確保できなかった。そして研究成果に関しても、論文のかたちにまとめきれていない。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初の研究計画を大幅に変更することなく、これに則って進める。資料収集の遅れに関しては、それを2022年度中に回復する見通しは目下のところたたないため、規模縮小を考え、当面は1945-49年のドイツ占領期の連合国発行によるドイツ語新聞の検討は断念しなくてはならない。その代替措置として、書籍としてこれまで入手した資料をより精密に検討する作業を進めることになる。 また、この間の資料整理・検討の成果として、2022年度中にはこれをまとめたものを3点公刊できる見通しである。さらに、「集団の罪」をめぐる検討の一部についても、論文のかたちで早急に公刊するべく努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツの諸機関における資料収集のための海外渡航が制限されてきたため、大幅な未使用額が生じている。これは当初の計画にしたがうかたちで今年度解消されるかどうか、見通しが立っていない。 基本的には、渡航しなくとも入手できる資料を引きつづき古書等のかたちで調達することを考えている。またパーソナルコンピュータ、プリンタ、スキャナ等の必要機器が老朽化して日常的に支障が生じているため、このいずれかの買い換えを検討している。
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