本研究は、戦後ドイツの文化と社会を包括的に検討する研究の一環に位置づけられるものであり、資料の系統的な収集とその周到な分析が研究の柱となる。 今回の研究期間にあっては、主として西ドイツの公論の中で、ナチ時代という「負の過去」がどのように扱われたかに関して、敗戦直後から1980年代半ばにいたるまでの変遷が追われた。 分析作業を通じて、「負の過去」が禁忌化された1950年代の後、1960年代以降に「過去の克服」の議論が拡がり、その問題意識が1968年前後の社会的・政治的動乱期のなかで発展され、さらに1980年代半ばにはそれが「戦後世代」の課題とも見なされていった過程が、言説史・思想史的に跡づけられた。
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