中世オック語作品の写本における欠損部分の研究を,13世紀の南仏の物語『フラメンカ』を題材に行った。聖職者であろう不詳の作者による作品は唯一写本に残されているが,冒頭と末尾の数葉が脱落しており,途中においても当時としてはショッキングな描写が数行削られ,さらに作中のラブレターが消失している。それらの欠損の意味を探ろうと試みた。そしてそれらの欠損の原因となったらしい「心性」を主として羞恥心の観点から迫ろうとした。 また,最近の語彙研究から,物語の作者に擬せられることもある聖職者ダウデ・デ・プラダスの作品について作者の恋愛観をよく示す一作品を,C写本から校訂して解釈をほどこしてみた。
|