研究課題/領域番号 |
19K00485
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
吉澤 英樹 南山大学, 外国語学部, 教授 (30648415)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 情動的レアリスム / ネオユマニスム / 自然主義文学の継承 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、基幹テクスト群の読解を経て浮かび上がった問題系の分析並びに、それらの当時の出版状況を調査することを目的としていた。その際テクスト選定後の分析については、当初1880年代以降の共和国で実施された普通教育を反映した主題や各テクスト間に共通したキーワードを抽出し、使用頻度の偏差など語彙分析などテキストマイニングの手法の導入を予定していたが、前年度述べた理由により、さらに適切な方法論を模索することとした。さらに出版事情の調査についてはフランスの図書館やアーカイヴで資料収集を行う予定であったが、それもCovid-19の流行のため出張が不可能となり他の方法が必要となった。そのため上記に関してはプーライユが1931年に刊行していた雑誌『新時代』における世界観や人間観を象徴するキーワードを抽出し、その語の背後にある思想について、1920年代から30年代にかけてのフランスの文学場における変化を検証する作業を行った。20年代に関しては前研究に引き続きポール・モランの例を挙げ、当時におけるインターナショナリズムと人間観を、新時代の美学を用意する伝統主義と相対主義の鬩ぎ合いとして分析し、論考を美術史研究者たちとの共著論集に発表した。一方で、1930年代の文学については、2019年の国際シンポジウムの発表をもとに論文を執筆する際に、発表時に出た30年代文学場における特有の現実と表象の関係を、20年代末から盛んになる自然主義文学の問い直しの文脈の視点も入れ考察を進めた。上記の研究から垣間見えた1930年代における独特の世界観・人間観と現実との関係については、プーライユと同じく30年代に新しい芸術と現実をインターナショナリズムの視点から考えていた美術史家ヴァルデマール・ジョルジュの『フォルム』誌と対照させる発表を美学・美術史の研究者とともに日仏美術学会のワークショップにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も新型コロナウイルスの世界的拡大が収束を見せることがなく、フランスのアーカイヴ等における1次資料の収集ができなかったこと、これによって基礎研究の部分が遅れてしまっている。また共同研究の可能性についても、国内に関しては対面やオンラインにおける試みを実践しながら今後について模索しつつあるが、海外とのものに関しては今後が見通せず、海外の研究者と定期的に連絡を取りつつも、具体的な形へ結びつけることができなかった。そのため、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては、やはり現地のアーカイヴ等における資料収集が必須であり、研究のための海外渡航が可能になる日が1日も早く来ることを望んでいる。そのような事情もあるが、基本的には計画書に従いながら、可能な限り当初の計画通りに研究を進めていく予定である。計画では来年度が最終年度になるが、状況を見据え研究期間の延長も視野に入れながら、波及効果のある研究成果を世に問う準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度もコロナの感染拡大が収束せず、計画していた出張などができず次年度使用額が生じた。 平時に戻った際に使用できるように支出を控えたこともその原因となる。今後は計画通りに進めば出張費や共同研究に支出を充てたい。また研究成果の発表のために使用することも予定している。
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