研究課題/領域番号 |
19K00485
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
吉澤 英樹 南山大学, 外国語学部, 教授 (30648415)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会芸術 / 文学史 / 美術史 / 映画史 |
研究実績の概要 |
研究延長期間である2023年度は、本研究の取りまとめ向けた活動と、次研究につなげる活動をおこなった。 前者については2022年度不首尾に終わった資料収集に再び取り組み、夏季休暇中にパリ政治学院のアーカイブにてプロレタリア文学叢書の版元の経営者で思想家のジョルジュ・ヴァロワについての資料収集をおこなった。また昨年度閲覧ができなかったカシャン市のプロレタリア文学のアーカイヴに関しては、管理人で研究者のジャン=ポール・モレル氏の協力の下、本研究に関わる一部収蔵資料の調査やパリ国立図書館における草稿類の閲覧ができた。また渡仏期間中、モレル氏以外にも元フランス国立図書館司書でアンリ・プーライユ友の会の幹事であるパトリック・ラムセイエズ氏とも会い、本研究についてのアドバイスをいただき意見交換する機会を持つことができた。帰国後はヴァロワとプーライユの関する資料の一部をまとめ、両者の関係から『文学の新時代』(1930)が出版された経緯の背景にある文脈を論文としてまとめ年度内に刊行した。その後は国立図書館で収集した草稿を解読し、まとめる作業を続けている。 後者については、成城大学グローカル研究センター所員鈴木重周と共同する形で1930年代における美術史の成立に関する著書を刊行した茨城大学の藤原貞朗氏を招き合評会を行い、本研究の背景となる30年代の芸文界における歴史編纂の実態について議論を交わし、そこから本研究を発展させた次研究のアイディアを構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでコロナウイルスの世界的蔓延により海外における資料収集をはじめとする研究作業がかなり滞っており、当初予定していた国際共同研究のようなものは不可能となった。しかしながら今年度は資料収集も行うことができ、当初の予定とは違うもののフランスでプロレタリア文学研究を行ってきたアカデミアの外にいる研究者たちとも関係を築くことができた。さらに本研究をより広い視点で捉えた次研究のアイディアも具体化し、今後の共同研究として体制を作ることができた一方で本助成事業の個人研究としてのゴールが見えたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるため、次研究につながるような形で本研究の取りまとめを行いたい。具体的には現在解読中である作家の手書き原稿の分析を終え、先行研究であるミシェル・ラゴンのものとはまた違った形で30年代の非党派的プロレタリア文学の文脈化・歴史化を行う一方で、30年代に問われていた社会における文学の機能並びにその美学的側面を美術や映画などの同時代の他メディアとの関係性から解明する成果論考を執筆刊行したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度の研究成果の取りまとめのために追加の資料収集が必要になることが予想されたため、旅費の一部として研究費を残すように引き続き出費の節約を行ったため。次研究と重ならない成果発表の部分での使用を計画している。
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